2020 Fiscal Year Annual Research Report
多孔性金属錯体に吸着されたアンモニア分子の反応性の理解と制御
Project/Area Number |
19K23648
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荻原 直希 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70848267)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / イオン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、所属研究機関の変更に伴う実験設備の制約のために、昨年度とは異なるアプローチを用いて金属-有機複合物質の合成を試みた。具体的には、アンモニア等の極性分子と強く相互作用することが知られるポリオキソメタレート(POM)に着目し、POMをビルディングブロックとした金属-有機複合体の合成を行った。POMの一種であるDawson型POM([α-P2W18O62]6-)とCsNO3をポリエチレングリコール(PEG)水溶液中で反応させることにより、新規複合体の合成を行った。単結晶X線構造解析により、得られた複合体はDawson型POMとCs+に囲まれたハニカム形状のナノチャネルを有しており、そのチャネルの内部にPEGが内包された構造を有することがわかった。研究開始当初はアンモニア吸着が可能な多孔性材料の開発を目的としていたが、溶媒であるPEGでチャネルが塞がれてしまい、多孔性の獲得には至らなかった。 そこで、視点を変えて、内包されたPEGの分子運動性を生かした機能性の発現を試みた。具体的にはPEGの末端に存在する-OH基のプロトンに着目し、プロトン伝導体としての応用を検討した。交流インピーダンス法により、得られた複合体の伝導特性を評価したところ、非加湿150度の条件下で1×10-4 S/cmの比較的高いプロトン伝導性を有することがわかった。また固体NMR測定より、観測されたプロトン伝導性は内包されたPEGの高い分子運動性に起因することが示唆された。今回使用したPEGは常温常圧では液体であるが、POMとCs+で構築されるナノチャネル中にPEGをトラップすることにより、150度の高温条件においても固体結晶中でプロトン伝導性が観測されることを見出した。 今後、POMにより構築されるチャネル中に積極的にプロトンキャリアを導入することにより、より良好なプロトン伝導性材料の開発を目指していく。
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Research Products
(10 results)