2019 Fiscal Year Research-status Report
次世代「緑の革命」植物の創生に資するDELLAと転写因子の複合体構造基盤解析
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19K23658
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 翔平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (20850910)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 緑の革命 / DELLAタンパク質 / 転写因子 / ジベレリン / ブラシノステロイド / 窒素吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の食糧増産に貢献した「緑の革命」植物は、背丈が低く倒れにくいという有用形質を示す一方、窒素吸収能が低下し膨大な肥料を要求するという欠点を持ち合わせる。これは「緑の革命」植物内で高濃度に蓄積される転写抑制因子「DELLAタンパク質」が有する生長肥大や窒素吸収能など多岐にわたる生理作用を同時に抑制するという分子機能に基づいた形質である。本申請研究では、従来の欠点を克服した「緑の革命」植物の創生を見据え、DELLAが多様なクラスの転写因子(伸長成長に関わる転写因子と窒素吸収に関わる転写因子を含む)を認識する機構に着目し、その複合体構造基盤解析を推し進めることでDELLAが多様な生命現象を制御できる原理的な知見を得ることを目的としている。 In vitroプルダウンアッセイを用いた分子間相互作用解析により、伸長成長を促すブラシノステロイド(BR)のマスター転写因子BZRが相互作用を確認し、BZR転写因子のDELLA相互作用領域を同定した。BZRのN末端側のDNA結合ドメインはDELLAとの直接的な相互作用はなく、C末端の天然変性領域(特定の立体構造をとらない領域)で直接相互作用することが明らかになった。また、天然変性領域単独ではDELLAとの結合は弱いが、 DNA結合ドメインを介した二量体形成によりDELLAとの結合力が増強されることも見い出した。本結果よりDELLAは、BZRがBR非存在下でプロテアソーム分解を受ける際に、BZRとの結合を解除しプロテアソーム分解を免れる巧妙な仕組みをもつ可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画通りにDELLAと伸長生長に関与するBZR転写因子との相互作用領域を絞り込んだが、結晶化には適さない天然変性領域を極めて多く含むことが明らかになったため、BZRの結晶化コンストラクトの検討に時間を要した。 また、窒素吸収に関わる鍵転写因子については、大腸菌を用いた安定なタンパク質発現系の構築には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、DELLAとBZR転写因子の複合体について、結晶化に適した状態へと仕立て上げることで複合体構造解析を成功に導く。また、大腸菌発現系が困難な窒素吸収に関わる鍵転写因子については、植物細胞を用いた一過的発現系での検討を進める。BZR転写因子と同様に相互作用領域の絞り込みを行い、DELLAとの複合体の結晶構造解析に取り組むことで、最終的にDELLAが多様な転写因子を認識できる仕組みを原子レベルで理解する。
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Causes of Carryover |
本年度は主にタンパク質の性状の改善に力を入れたため、物品コストが最も生じる結晶化実験には至らなかった。 結晶化のための準備は万全に整ったので、次年度に本格的な結晶化実験を実施する。
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Research Products
(3 results)