2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23664
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
高村 映一郎 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (30843015)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | バイオ電池 / 酸化還元酵素 / アノード / 直接電子移動 / 人工酸化還元酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、長期安定性を有する超好熱性アーキアPyrobaculum aerophilum 由来ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素(PQQ-GDH)の分子表面に存在するリシン残基に対してアミノ基反応性メディエータ(PES)を修飾することで、外部からメディエータを添加する必要のない人工的な直接電子移動型酸化還元酵素の作製に成功している。2020年度は、PQQ-GDHの分子表面に存在するリシン残基の中でPQQからの電子を受け取る可能性のあるPQQに近い5つのリシン残基(K76, 258, 319, 325, 361)に焦点を当て、遺伝子工学的手法を用いて各リシン残基をアルギニンへ置換させPESを修飾不可とした変異体を作製し、PQQ-GDHと電極間の電子伝達に寄与する可能性のあるリシン残基について検討した。その結果、5種のリシン置換変異体の内で3種の変異体(K258, 319, 325)においてグルコースの酸化に基づく電流応答の減少が確認された。そのため、PQQ-GDHにおいてPQQから電極への電子伝達には「PQQ-PES(K258)-PES(K319)-電極」という経路と「PQQ-PES(K325)-PES(K319)-電極」という経路の2つが推測された。そこで、さらなる電子伝達効率向上による電流密度の向上のため、K258とK325の間へPES修飾部位となるリシン残基の変異置換を行った。その結果、リシン残基を増加させた変異体は野生型と比較してグルコースの酸化に基づく電流密度が約2倍増大した。PQQから電極への電子伝達経路と考えられる領域へPESの修飾部位となるリシン残基を追加することで、PQQから電極への電子移動効率が向上したためだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メディエータの修飾部位となるリシン残基をアルギニン残基へ置換した変異体の評価によって、PQQから電極への電子伝達経路が推定された。さらに、推定された電子伝達経路へリシン残基を追加することによって野生型よりも約2倍高い電流密度を達成しており、当初予定していた効率的な電子伝達経路の構築に成功しているため、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はPQQから電子を受け取るPESを追加することで電子移動効率の向上を達成したが、今後は電極へと電子を渡すK319に近い部位へのリシン残基置換(PES修飾)を行う。この置換によって、電極へ電子を渡すPESが増加させPQQ-電極間の電子移動効率の向上を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍により自宅待機が多くあり、前半は実験を行うことが難しかったため年度内での研究完了が困難であり次年度使用額が生じた。2021年度では2020年度に行う予定であった実験計画通りに進める予定であるため、使用計画についても2020年度の使用計画通りである。
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