2019 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムマイニング法による好極限微生物からの新規有用化合物の探索
Project/Area Number |
19K23671
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
上岡 麗子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (30592365)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 天然物化学 / ゲノムマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで比較的探索源として活用されて来なかった好極限性菌、特に中高度好塩菌を対象に、ユニークな天然化合物の探索を行うことを目的としている。天然資源からの新規化合物探索は、新たな医薬リード化合物を発見する上で非常に重要であるが、従来の探索法では既知化合物にあたる確率が非常に高くなっている。本研究ではゲノムマイニングにより得られた情報から二次代謝産物の大まかな構造をあらかじめ予測する手法を用い、未利用な細菌を対象とすることで、より効果的な探索を行う。そこでまず、NCBIのデータベースに存在する入手可能な好極限性菌を対象にゲノム情報を解析した。これら未開拓な微生物のゲノムを、二次代謝産物の生合成遺伝子を検出する予測ツールで解析し、得られた生合成遺伝子情報のうち既知化合物の生合成遺伝子との相同性が低いものについて、生産されうる化合物の大まかな構造を予測した。特に、trans-acyltransferase (AT) polyketide synthase (PKS) とよばれる近年発見された異常ポリケチド合成酵素をもつ微生物が選抜された場合は、優先的に詳細な構造予測を行った。生化学的に通常のI型PKSとは異なるこのtrans-AT PKSからはユニークな構造を持つ化合物が多数報告されていることから、これらの酵素を研究対象とすることは有用な化合物を探索する上で非常に重要であり本研究を特色づける。得られた予測構造をもとに部分構造検索を行い、新規化合物を生産すると見られる微生物を選別した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り、バイオインフォマティクス技術を用いてゲノム情報の解析を行った結果、trans-AT PKSを含み、既知化合物の生合成遺伝子との相同性が比較的低い生合成遺伝子を持つ入手可能な微生物を選別することが出来た。しかしながら、これらの選別した微生物を対象とした有機化学実験に着手することは出来なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
選別された微生物を対象に培養を行い、菌体および上清をそれぞれ各種溶媒で抽出後、高分解能LCMSで分析することで、予測された化合物と組成・性質の近いターゲットとなる候補化合物の検出・解析を行う。その後、ODSカラムクロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲルろ過、HPLC等に供し、候補化合物を単離する。得られた化合物は、UV、IR、MS、2D NMRなど各種機器分により化学構造を決定する。機器分析のみによっては化学構造が決定できない複雑な化合物は、誘導体化や分解反応に供しフラグメントを得て構造解析を行い、得られた知見から総合的に全体構造を導き出す。
|
Causes of Carryover |
前年度では、NCBIで公開されているデータベースからゲノム情報を得て、バイオインフォマティクス技術を用いてゲノム情報の解析を行い、候補となる微生物の選別をする過程までを行ったため、消耗品等に関わる経費は不要であった。今年度は、選別された微生物を購入し、培養、有機化学実験を行うための経費として使用する計画である。
|