2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23673
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 彰雄 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (70847748)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ファイトプラズマ / ゲノム進化 / 次世代シーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主生細胞から独立して生育できない「絶対寄生性」植物病原体は、宿主から収奪する何らかの物質に生育を依存していると考えられており、この生体システムを標的にすることで有効な防除法が確立できると期待される。しかし分子レベルのメカニズムには未解明な点が多く、新たなアプローチが求められている。絶対寄生性細菌の一群であるファイトプラズマ属は、いずれも宿主体液から脱することがなく昆虫と植物に交互に感染するのに対して、最も近縁なアコレプラズマ属は植物表面等で腐生的に生育する。そのためファイトプラズマ属の絶対寄生性は祖先が属分化に際して獲得した性質であると考えられる。本研究では、「属分化の際にゲノムと細胞活動にどのような変化が起こったのか」「その後の種分化によりゲノムと細胞活動がどのように変遷したのか」を調べることで、本属の絶対寄生性の起源と進化を解明することを目的としている。 本年度は、解析対象となるゲノム情報を収集する目的で、複数のファイトプラズマ種について次世代シーケンスに供した。ファイトプラズマゲノムの次世代シーケンスにあたり、培養不能なファイトプラズマのみに由来する純粋DNAを用意できない点、種によっては稀少性ゆえに多量のDNAを用意できない点が課題であった。そこで、前者については感染植物の全DNAから濃縮することで、後者については核酸増幅を行うことで対処し、次世代シーケンスの結果ドラフトゲノムの取得に成功した。他方、宿主体内でファイトプラズマを取り巻く物質環境を解明する必要があり、昆虫体内の局在解析を行うことで昆虫宿主における寄生箇所や時系列的変化を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、複数のファイトプラズマ種について次世代シーケンスによるゲノム解読を行い、染色体マップの作成に取り組む予定であった。[研究実績の概要]に述べたように、感染植物全DNAからファイトプラズマゲノム塩基配列の取得に成功しているため、一定の進捗が得られたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンスによって得られたコンティグ間の未読領域を、別途PCR増幅のうえ解読することで、全ゲノム情報の取得に取り組む。さらに、遺伝子アノテーションののちに染色体マップを比較解析して、ゲノム構造と遺伝子ラインナップの変遷を明らかにする。
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Causes of Carryover |
ファイトプラズマのゲノム解読が完了していないため、次世代シーケンス、DNA増幅等に使用予定であった分の残額が繰り越されている状況にある。引き続き実施するゲノム解読と、のちの解析・検証実験に使用する。
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Research Products
(2 results)