2019 Fiscal Year Research-status Report
ダイズおける自然発生RNA干渉の器官特異性決定メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K23674
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田原 緑 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (20849525)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | ダイズ / RNA干渉 / 器官特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
食用ダイズの黄色い種皮では自然発生RNA干渉によりアントシアニン合成が抑制されている。しかしこのRNA干渉は種皮のみでおこり、胚乳や葉ではアントシアニンやイソフラボンが合成されており、この器官特異性を決定づける因子は明らかになっていない。 申請者はこれまでシロイヌナズナやアブラナを用いてRNA干渉において最重要酵素であるダイサータンパク質DCL3, DCL4が器官特異的に制御されていることを明らかにしてきた。この知見を基にダイズの器官特異的RNA干渉はDCL3, DCL4が種皮特異的に制御されているという仮説を立てた。本研究では①植物共通のDCL3, DCL4活性化物質の解析と②ダイズ特有のDCL3, DCL4阻害物質の同定を行うことによって、ダイズの重要形質を決定する器官特異的RNA干渉の発生メカニズムを明らかにするものである。 2019年度は黄ダイズ・エンレイを用いて活性化物質の定量及び阻害物質の探索を行なった。DCL3, DCL4が阻害されている葉では葉の成熟段階に応じて蓄積に変化が見られることが明らかになった。またDCL3, DCL4の阻害は2つの物質が影響しあうことによって阻害が行われていることが示唆された。 さらにエンレイだけでなく複数のダイズ品種を用いてDCL3, DCL4の活性を測定したところ、品種によって活性に違いが見られた。この違いは種皮におけるRNA干渉の程度に相関していることから、DCL3, DCL4の活性によるRNA干渉の器官特異性は一部の品種に限らずダイズ全体で保存されていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りに活性化物質の定量を行うことができた。これまでの研究からDCL3, DCL4の阻害は1つの化合物によって行われていると考えていた。しかし本年度の研究から2つの異なる性質をもつ物質が相互作用しあうことによってDCL3, DCL4の阻害が起こることが明らかになった。この2つの物質の性質を明らかにすることができた。また精製化合物を用いたDCL3, DCL4阻害実験を行い、DCL4を強く阻害する化合物を見つけることができた。 さらに当初の計画では黄ダイズであるエンレイの1品種のみの解析を予定していたが、複数のダイズ品種を用いる実験に発展させることで、DCL3, DCL4の活性と器官特異的RNA干渉の関係性が特定のダイズ品種(エンレイ)のみで起こる現象なのか否かを検証することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究成果に基づき、2つの阻害物質の同定を完了させる。物質同定が行われたあとで蓄積量を定量する。またin vitro系を用いてDCL3, DCL4に阻害物質を添加し酵素活性への阻害を定量する。 活性化物質と併せて阻害物を複数の品種の各器官から定量し、統合・議論することで、DCL3, DCL4の酵素活性制御による自然発生RNA干渉の器官特異性の全貌を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初想定していた仮説と異なり阻害物質が複数存在していたことから、一部試薬の購入を変更した。 2-3月に予定していた学会及び研究打ち合わせが新型コロナウイルスの影響で中止になり出張費として予定していた金額が繰越となった。 2020年度に計画していた出張費と併せて物品購入費に転換し、研究をさらに発展させる。
|
Research Products
(2 results)