2019 Fiscal Year Research-status Report
昆虫媒介性ウイルスに対する新規ムギ類病害応答モデル系の構築
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19K23675
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
湊 菜未 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60843430)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ウイルス / 昆虫伝染 / ムギ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ムギ類に感染する黄萎ウイルス群 (YDVs) は、50年以上に渡り地球規模で食糧生産を脅かし続けているにも関わらず、他の病原体と比べて病害応答における基礎的知見は十分蓄積されていない。ミナトカモジグサはムギ類に発生する昆虫媒介性ウイルスの宿主と成り得ることに加え、全ゲノムが解読されており、ムギ類作物と比較して世代あたりの生育期間を大幅に短縮した上分子レベルで病害応答を観察できる非常に有用なツールである。 2019年度において、報告者はムギ類モデル植物であるミナトカモジグサを用いた新規ムギ類病害応答モデル系の構築に取り組んだ。YDVsのうち本邦に発生するBYDV-PAVおよびCYDV-RPSと呼ばれる二種のウイルスがミナトカモジグサを宿主として感染・増殖すること及び葉の赤化などの病徴を誘導することが明らかとなった。YDVsが感染したミナトカモジグサにおいては、病徴の定性的解析のほか、ウイルス蓄積量を定量する系や植物の防御応答に関与することが示唆されている転写因子群の遺伝子発現の変化を定量する系を新たに確立することができた。また、これと並行してパンコムギの栽培品種を用いた収量への影響調査とウイルス2種の混合感染による病徴の激化メカニズムについても解析を進めることができた。今後は、現在系の確立に取り組んでいる媒介昆虫の嗜好性評価を合わせた病原体-媒介昆虫-植物の三者間相互作用の解析を進めることで、防除法の確立に資する鍵となる宿主因子の同定を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度においてミナトカモジグサがYDVsの宿主として十分に機能し、本邦由来のウイルス分離株においてはコムギ栽培品種と比較してより明瞭な病徴を呈することが明らかとなったほか、ウイルス一種の単独感染および二種の混合感染の両方の条件下でウイルス蓄積量の定量系を確立することができた。また植物の遺伝子発現プロファイルの解析も進んでいることから、順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果より、YDVsの感染下において植物の防御応答に関与することが示されている転写因子群の遺伝子発現の変化が示唆されている。今後は系の確立に取り組んでいる昆虫の嗜好性評価を合わせて防除法の確立に資する鍵因子の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
2019年度に予定していた解析の一部を次年度に行うことになったため、次年度使用額が生じた。 2020年度において遺伝子発現解析のための核酸抽出試薬・リアルタイムPCR関連試薬およびその他チップ・チューブ類を購入するために使用する。
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Research Products
(4 results)