2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on decadal-scale sediment storage and transport in mountain catchment
Project/Area Number |
19K23681
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
厚井 高志 北海道大学, 広域複合災害研究センター, 准教授 (40845294)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 土砂滞留 / 中長期時間スケール / 流域スケール / 二次移動土砂 / 樹木群落情報 / 植生侵入 / 経年変化 / 降雨出水規模 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,大規模な土砂生産後,数十年という中長期時間スケールにおいて,航空写真アーカイブデータを活用しつつ,水文データとの比較や河道内への植生侵入状況から流域内の貯留土砂の二次移動実態を明らかにすることを目的としている。本年度は,1973年に観測史上最大の豪雨により流域内で複数の崩壊や土石流が発生した北海道知内町小谷石地区中ノ沢流域を対象として,航空写真画像データを用いたSfM技術を活用した三次元地形モデルの作成,土砂移動状況把握のための現地調査,降水量を中心とした水文情報の整理を行った。三次元地形モデル作成では災害発生直後に撮影されたカラー写真画像では三次元地形モデルを生成することができたものの,モノクロ写真画像では精度を持ったモデル生成には至らなかった。これは対象範囲でGCPとなる地物を十分に配置することができなかったことも影響していると考えられた。時系列の航空写真判読,および河道内への植生侵入状況から,土砂生産イベント後,河道付近の土砂移動は数十年にわたってほとんどなかったと推定され,縦断的な植生侵入時期の推定結果から下流域の方が上流域より土砂移動が少なかったと考えられた。一方,最新の航空写真が撮影された2009年以降に流域出口付近に設置された砂防堰堤を満砂させるような比較的大規模な土砂移動が生じていたことが分かった。水文データの整理から,2013年に1973年の降雨強度を上回る降雨イベントが発生しており,この流域では2009年以降,新規崩壊の発生は報告されていないことから,2013年の降雨イベント時に河道内の貯留土砂が流域出口まで大量に移動したと考えられた。以上より,対象とした流域では河道内の貯留土砂の恒常的な土砂移動は顕著ではなかった一方,崩壊発生から数十年経過した後も貯留土砂が大規模の降雨イベントが直接的な誘因となって土砂の二次移動を引き起こしたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基本的には計画通りに進んだが,一部,新型コロナウイルス感染症の再流行を受けて現地調査を自粛した。北海道知内町小谷石地区では航空写真アーカイブデータを用いてDigital Surface Models(DSM)作成した。さらに小谷石地区については現地調査を実施して,河道内で一斉同齢林を形成している4か所において縦断的に林齢調査を実施して,植生侵入時期を把握した。一方,新型コロナウイルス感染症の再流行を受けて奥尻島で予定していた現地調査は今年度も実施できていない。奥尻島については次年度に状況をみて現地調査を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
航空写真アーカイブデータを活用した三次元地形モデル生成にあたっては,現地でGNSS測量を実施してGCPを補完するなどして精度向上を図る。また,小谷石地区中ノ沢に設置された最下流堰堤堆砂地には侵入後数十年経過したヤナギ類が定着しているものの,近年の土砂流出により埋没し,一部は枯死しているものもある。近年発生した土砂の二次移動実態のさらなる把握のため埋没林の不定根の有無などを現地で確認する予定である。ただし,奥尻島での現地調査を含め,その実施にあたっては新型コロナウイルス感染症の流行状況を踏まえて可否を判断する。得られた最終成果は学会発表や投稿論文として取りまとめ公表する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画では春季または秋季に奥尻島で現地調査を実施予定であったが,新型コロナウイルス感染症の流行に伴う行政からの移動制限等の要請を踏まえ現地調査を自粛した。そのため現地調査に係る旅費および調査費用が執行されず次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)