2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study on decadal-scale sediment storage and transport in mountain catchment
Project/Area Number |
19K23681
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
厚井 高志 北海道大学, 広域複合災害研究センター, 准教授 (40845294)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 土砂滞留 / 土砂の二次移動 / 樹木群落情報 / 降雨強度 / 降雨継続時間 / 流域土砂動態 / 一斉同齢林 / 土砂流出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,大規模な土砂生産後,数十年という中長期時間スケールにおいて,航空写真アーカイブデータを活用しつつ,水文データとの比較や河道内への植生侵入状況から流域内の貯留土砂の二次移動実態を明らかにすることを目的としている。本年度は,降雨履歴との比較や河道内への植生侵入状況から貯留土砂の二次移動実態を検討した。過年度までの検討から災害直後に最下流に設置された砂防堰堤は2008年まで堆砂が進行していなかったものの,2009年以降には満砂したことが分かっている。河道内および砂防堰堤・治山堰堤堆砂地の一斉同齢林(ケヤマハンノキ群落,ヤナギ類群落)を対象として成長錘を用いて計36本の樹齢を調査し,樹木群落情報を上下流方向に縦断的に把握した結果,下流部では1996年頃,中流部では2006年頃に一斉同齢林が侵入していた。このことから,流域下流部では近年まで長期間にわたって土砂移動がほとんど生じていなかった一方,上流部から中流部にかけては木本植生の定着を阻害する程度の規模の土砂移動が継続していた可能性が示唆された。1973年から2019年までの降雨データから,年最大連続雨量を記録した降雨イベントについて降雨強度Iと降雨継続時間Dの関係を整理した結果,降り始めから最大時間雨量を記録した時刻までを一連の降雨イベントとした場合,2013年に1973年の降雨強度を上回る降雨イベントが発生していた。この流域では2009年以降,新規崩壊の発生は確認されていないことから,2013年の降雨イベントは降雨継続時間も最も長いことから,この降雨イベント時に河道内の貯留土砂が流域出口まで大量に移動したと考えられた。以上より,上流から中流部にかけては河道内で中小規模の土砂移動が恒常的に生じていたほか,崩壊発生から約40年後であっても降雨イベントが貯留土砂の大規模な移動が引き起こしていたことが分かった。
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