2019 Fiscal Year Research-status Report
貧酸素水塊への酸素供給は化学合成独立栄養細菌による有機化合物合成を促進するか?
Project/Area Number |
19K23685
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
森 郁晃 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 臨時研究補助員 (60849537)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 貧酸素水塊 / 化学合成独立栄養細菌 / 堆積物 / 大村湾 / 閉鎖性内湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪天候時の強風等を原因とした一時的な酸素供給は、貧酸素水塊の規模縮小に貢献する。しかしながら、夏季の閉鎖性海域では、すぐに貧酸素水塊が再形成される。その理由は、(仮説) 貧酸素海域への酸素供給によって、海底堆積物表層で活発化した化学合成独立栄養細菌が、好気呼吸によって水塊の再貧酸素化を促すと共にCO2固定による有機化合物合成を行って,海域の有機物量の減少を妨げる為だと考えられる。 本研究では上記の仮説検証を目的として、長崎県大村湾をモデル海域として観測・実験を実施した。大村湾中央部にて貧酸素水塊が確認された8月と、貧酸素水塊解消後の11月に堆積物コアを採取し、好気的に培養した際の酸素消費速度(潜在的酸素消費速度)、および細菌群集構造の変化を調べた。湾の中央部では7~9月に貧酸素水塊が形成されたが、例年と比べ小規模であり、底層水が無酸素化することはなかった。そこで堆積物コアを暗所培養して直上水を無酸素化させた堆積物コア(無酸素コア)を作成し、現場サンプルと同様の実験を実施した。無酸素コアの潜在的酸素消費速度は、現場コアに比べ1.5-1.9倍の酸素消費速度を示し、全酸素消費の72-75%が微生物の好気呼吸由来であると推定された。8月の現場および無酸素コアの細菌群集構造解析では、好気的培養開始後24時間で化学合成独立栄養細菌を含む細菌グループの顕著な存在割合の増加が認められた。Campylobacterales目の増加が著しく、8月の現場コアでSulfurimonadaceae科が0.4%から3%に増加、無酸素コアでArcobacteraceae科が0%から17%まで増加した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、練習船鶴洋丸を用いた海洋観測を実施し、貧酸素水塊形成期と解消期における堆積物コアサンプルを採取できた。採取したコアを用いて貧酸素化した堆積物コアの潜在的酸素消費に占める好気呼吸の割合が高いことを示した。さらに貧酸素海域から採取した堆積物コアを好気的に培養すると化学合成独立栄養細菌の存在割合が増加する傾向を示した。これらは化学合成独立栄養細菌による好気呼吸が貧酸素水塊の維持に寄与するという仮説を支持しており、今年度の目標に概ね達している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次世代シークエンサーによる遺伝子配列データ解析を活用して、好気呼吸を介して堆積物酸素消費に寄与する細菌群集を明らかにする。また、大村湾中央部海底における化学合成独立栄養細菌の多様性と現存量の変動パターンを定量解析し、貧酸素水塊への酸素供給がもたらす各細菌グループへの影響を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
一部の次世代シーケンス解析実施時期を次年度の早期に変更したため、それに伴う費用について次年度使用額が生じた。次年度に次世代シーケンス解析委託費として執行する予定である。
|
Research Products
(2 results)