2020 Fiscal Year Annual Research Report
体表粘液に着目したプロテオーム解析によるサクラマス種苗の感染症早期診断技術の開発
Project/Area Number |
19K23690
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
西川 翔太郎 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部 さけます・内水面水産試験場, 研究職員 (80845727)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 魚病 / サクラマス / プロテオーム / 体表粘液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サクラマス稚魚の体表粘液におけるタンパク質の発現動態を網羅的に解析し、感染症に対する病態生理学的知見を得るとともに、病原体感染により顕著に変動する体表粘液中タンパク質をバイオマーカーとして検出する早期診断技術の開発を目的とした。サクラマス増養殖において問題となる伝染性造血器壊死症(IHN)原因ウイルスおよび細菌性冷水病の原因菌を感染させたサクラマス稚魚の体表粘液中では免疫応答に関与するタンパク質も検出された。特にIHNウイルス感染した稚魚体表粘液中ではインターフェロン誘導性タンパク質が有意に変動していることが示された。これら病原体感染により変動した各タンパク質のアミノ酸配列を元に作製したペプチドを抗原とするポリクローナル抗体を作製し抗原検出ELISA法の確立を試みた。しかし、非感染群の体表粘液に対してもわずかながら反応が認められ、これらタンパク質が宿主に侵入を試みる微生物に対し恒常的に産生されている可能性が示唆された。 感染症の蔓延を防止するためには早期診断が不可欠であるが、病原体の増殖の遅さや感染初期の低病原体量に起因する検出感度の低さ等の従来の魚病診断法がもつ問題点から、感染初期での診断は困難であった。今回、病原体の検出に依存せず、体表粘液中のタンパク質をバイオマーカーとし宿主の健康状態をモニタリングすることで、感染症蔓延防止対策を早期に実施できるようになる可能性が示された。また、体表では病原体の侵入を物理的に阻止するだけでなく、免疫応答に関連するタンパク質により積極的に病原体を排除していることが示唆され、これらタンパク質の産生を活性化させることで、病原体が体内に侵入する前に排除し感染症を予防する新たな予防法の開発にもつながる。
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