2019 Fiscal Year Research-status Report
地震時にフィルダム堤体に生じた亀裂を考慮した水位低下速度の決定に関する研究
Project/Area Number |
19K23697
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
本間 雄亮 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究員 (00827157)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | フィルダム / 亀裂 / 飽和・不飽和浸透流解析 / 水位低下 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィルダムやため池で水位の急低下を行うと堤体内部に間隙水圧が残留し、堤体斜面がすべり破壊を起こす危険性がある。本研究では地震等により亀裂が生じたフィルダムで水位低下を行うときの堤体の安全性に、水位低下速度が与える影響に注目した。 令和元年度は飽和・不飽和浸透流解析を行い、堤体内部の圧力水頭分布のシミュレーションを行った。数値解析では、フィルダム堤体を湛水させ、定常状態に達したときを圧力水頭分布の初期条件とし、そこから水位を低下させた。解析条件としては、亀裂の生じる位置と深さ、水位低下速度を変化させた。解析を行うにあたって、亀裂は透水性の高い物質と仮定することで表現した。亀裂は水分特性を表すvan Genuchtenモデルのパラメータと飽和透水係数を調整して表した。水位低下後の圧力水頭分布は、亀裂付近で高くなる傾向がみられた。亀裂深さの影響について、堤体の同じ位置にそれぞれ異なる深さの亀裂が生じたと仮定して計算を行った結果、亀裂が深くなるほど堤体内部の圧力水頭が減少しにくくなることがわかった。さらに、水位低下速度が大きくなるとその傾向は顕著で、水位を低下させても圧力水頭は減少せずに堤体内部に残留した。 飽和状態では、透水係数の大きい亀裂に向かって選択的な流れが生じ、亀裂付近の圧力水頭が高くなった。しかし、水位が低下して堤体内の圧力水頭が下がると、亀裂の透水性は急激に低下し、亀裂部を通る水の移動が停滞した。その結果、圧力水頭は低下せずに残留したと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亀裂が生じたフィルダムで水位低下を行ったときの堤体内部の圧力水頭分布について、シミュレーションを行った。亀裂周辺部で圧力水頭が高くなることや、水位低下速度を大きくすると圧力水頭が下がらずに残留することがわかった。圧力水頭分布の変化や堤体内部の水の移動について追うことができ、亀裂のある堤体内での水移動を把握することができた。模型実験については使用する土質材料の選定、模擬的な亀裂の作成方法の検討を行った。研究成果の一部は今年度の学会発表において成果報告を行う予定である。そのため、研究課題は順調に進展しているものと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は小型の土壌水分計を作成し、模型実験でフィルダム堤体内部の圧力水頭の測定を行う。初年度に行った数値解析では亀裂を透水性の高い物質とみなすことで、定性的に堤体内部の圧力水頭の挙動の解析を行った。今年度行う模型実験から得られる結果を用いて、亀裂の再現に適した土壌水分パラメータを決定し、堤体内部の圧力水頭分布を定性的・定量的に評価する。亀裂の生じたフィルダムで圧力水頭の影響が小さくなる水位低下速度について検討を行う。
|
Causes of Carryover |
令和元年度にシミュレーションを行い、令和2年度に模型実験を行うこととしたため、令和元年度に計上していた模型実験に必要な経費が生じなかったためである。今年度は模型実験に必要な経費やセンサーの購入、学会発表の旅費等に使用する予定である。
|