2019 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of food pest invasion period and death time using morphological changes profiling and nucleic acid degradation degree
Project/Area Number |
19K23698
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松元 咲樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 研究員 (80846965)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 食品流通 / 食品害虫 / 破損特性 / 核酸残存量 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品は、その原材料の収穫後、輸送機関を用いて倉庫、加工工場などの農業施設に運ばれ最終的に消費者に届けられる。食品害虫が流通工程において発見された場合は、流通環境改善のために混入場所や死亡時期を推定することが必要である。本課題は、食品害虫の(1)形態変化プロファイル、(2)核酸の残存量による侵入・死亡時期の推定を目指すものである。研究計画の初年度では実験環境の構築を行い、落下試験および全DNA・RNA量の調査を行った。得られた成果を以下に示す: (1)害虫はトラックによる振動や積荷の中継時などにおける荷扱いなどの衝撃により、破損した状態で見つかることも多い。破損に関する調査は、落下試験機で流通工程における落下衝撃を再現することにより行った。貯穀害虫のコクゾウムシ、コクヌストモドキの破損は、落下高さが高くなるにつれ、1個体由来の破片数は増加傾向にあった。両種を比較すると、同じ落下衝撃に対してコクゾウムシは破片数が増加せず、破損しにくかった。種によって付属肢の破壊特性が異なることがわかった。 (2)通常生物が死ぬと核内に存在するDNAおよびRNAは,分解酵素のはたらきと分子そのものとしての安定性の喪失により分解することが知られている。そこで,DNAとRNAの死後の分解程度を調査するため,コクゾウムシとコクヌストモドキを用い,一個体からDNAとRNAを分別して調製し,死後日数に伴う残存量の変化を蛍光光度計により得た。死後日数の増加に伴いDNA・RNA量が減少することを確認し,特に死亡直後と1日後の間に急速な減少が見られた。この結果より,少なくとも死亡直後か死後1日以上経っているのかについての判断が可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究遂行により、昆虫の形態変化プロファイリングを行ううえで基盤となる破損評価方法について検討することができた。落下試験においては、流通工程における落下衝撃を再現し、貯穀害虫のコクゾウムシ、コクヌストモドキの付属肢の破壊特性についての知見を得ることができた。死亡時期推定に向けた実験環境の構築はおおむね計画に沿って遂行できた。全DNA・RNA量の経時変化について調査し、経時変化を捉えることができたため、研究計画は順調に進捗していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、昆虫の力学特性に着目し、付属肢ごとに有効な力学試験法を構築する。得られた結果から、破損に至るまでの形態変化を説明することを目指す。死亡時期推定に向けて、コクヌストモドキのハウスキーピング遺伝子等のリアルタイム定量PCRを行い死後経過日数による発現量を調べる。死後日数予測に最適な遺伝子を選定する。また、これまでの研究成果について学術論文として公表する。
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Causes of Carryover |
学会の中止により、旅費に未使用額が生じた。また、経費の節約に努めたため次年度使用額が発生した。次年度は、未使用額とあわせて、力学試験に必要な機材と、遺伝子発現解析に用いる試薬等の購入に充てる。
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Research Products
(2 results)