2019 Fiscal Year Research-status Report
イヌ腫瘍の免疫抑制機構阻害剤の放射線増感効果における臨床研究
Project/Area Number |
19K23702
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
出口 辰弥 北海道大学, 獣医学研究院, 特任助教 (10849962)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 放射線治療 / PD-L1 / 免疫療法 / イヌ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イヌの自然発生の腫瘍において放射線治療による腫瘍の免疫回避機構(Programmed death 1、およびProgrammed death ligand 1(PD -L1))の増強を証明すること、および、単剤での奏効率が低い抗PD-L1抗体を用いた免疫療法を補う新しい放射線増感治療を立案し、腫瘍の治療効果を改善に寄与することを目的としている。 2019年度は、これまでに抗PD-L1抗体単剤で評価を行ってきたイヌのメラノーマに対して、抗PD-L1 抗体の治療効果が放射線と併用することによって改善するかを評価検討するため臨床試験を行ってきた。現在までに、13例のイヌの口腔悪性黒色腫に対して、抗PD-L1抗体と放射線治療を併用している。そのうち8例においては、肺転移を認めているステージⅣの症例であり、経過観察が可能であった4例のうち1例において照射野外の肺転移病巣の縮小(アブスコパル効果)を認めた。このように肺転移巣の縮小が25%に認められ、これは抗PD-L1抗体薬単剤のステージⅣにおける肺転移巣の縮小率15%程度と比較して、高い傾向となった。このことから、抗PD-L1抗体の治療効果が放射線治療と併用することによって増強され、アブスコパル効果が誘導されたと考えられる。2020年度は、さらなる症例集積、および治療後の経過のデータ収集を行い、治療効果(腫瘍の縮小率、無病増悪期間、および全生存期間など)を評価し、放射線治療と抗PD-L1療法の併用治療の有効性をより詳細に検討する。 本研究の成果は、新たな放射線治療と免疫療法を併用した治療方法を立案することにつながり、これまでの放射線治療ならびに免疫療法の問題点を解決するブレイクスルーとなり後続研究へ応用される可能性が非常に高いと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、13例のイヌの口腔悪性黒色腫に対して、抗PD-L1抗体と放射線治療を併用している。そのうち肺転移を認めた8例のうち2例において照射野外の肺転移病巣の縮小(アブスコパル効果)を認めた。このことから、抗PD-L1抗体の治療効果が放射線治療と併用することによって増強され、アブスコパル効果が誘導されたと考えられるが、フォローアップ期間が不十分なため、腫瘍の縮小率、無病増悪期間、および全生存期間などの統計学的な解析は行えていない。そのため、2020年度においては、さらなる症例集積、および治療後の経過のデータ収集を行って行く予定である。 一方で、照射前と照射後の腫瘍組織のPD-L1の発現量の変化の検討においては、もともとのイヌの口腔内メラノーマの照射前のPD-L1の発現量が高く、照射後のPD-L1発現量の増強が免疫染色においては観察できていない。また、照射実施中の腫瘍のサンプリングが困難な(生検後の出血など)症例が多く、サンプル数も不足している。
|
Strategy for Future Research Activity |
抗PD-L1 抗体の治療効果が放射線と併用することによって改善するかを評価検討するための臨床試験においては、さらなる症例集積、および治療後の経過のデータ収集を行って行く予定である。 照射前と照射後の腫瘍組織のPD-L1の発現量の変化の検討においては、腫瘍のサンプリングが困難な(生検後の出血など)症例が多く、サンプル数が不足している。放射線照射前、照射後の腫瘍の放射線による免疫抑制増強メカニズムを評価検討行うため、対策として免疫染色以外のPD-L1抗体の発現量を定量化できるwestern blotting、RNAシークエンス解析などの症例への応用を目指し、腫瘍細胞株やマウスの腫瘍組織を用いた解析を行って行く予定である。 また、2020年度においては、これらの研究の成果の発信および関連する情報の収集のために国際および国内学会への参加を予定している。また、2020年度に試験結果は原著論文にまとめオープンアクセス誌に投稿することを予定している。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で、参加を予定していた国際学会の世界獣医がん学会(3月、東京)が中止となった(20万円程度)。また、放射線によるPD-L1増強における検討において、サンプル数が予定していたよりも少なく、解析に必要な試薬などの購入が少なくなった。次年度使用額においては、タンパク解析用の試薬などの消耗品ならびに、マウスの購入に必要となる。
|