2019 Fiscal Year Research-status Report
炎症性卵子pick-up障害における分子病態の解明と新規診断法の検討
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19K23708
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
細谷 実里奈 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (80848797)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 卵子pick-up / 卵管 / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫疾患モデルマウスの卵管は、炎症とともに線毛上皮形態機能の異常及び卵子pick-up機能の低下を呈する。本研究では、同疾患モデルマウスに加えて繁殖障害牛も解析対象とし、免疫異常が卵管の形態機能異常を導く分子病態及びその臨床エビデンスを明らかにする。具体的には、疾患群マウスの卵管病理変化と相関する分子を免疫異常と卵管機能障害を繋ぐ実働分子とする。繁殖障害牛においても当該分子の卵管内動態を解析し、臨床検体における卵管異常マーカー分子としての有用性を検証する。 本年度は、健常マウスと自己免疫疾患モデルマウス(MRL/MpJ-Faslpr/lpr, 以下MRL/lpr)の卵管内網羅的遺伝子発現解析の結果を基に、両者の間で顕著に差がある分子の中で特に免疫・線毛機能の両方に関与すると予想される“各種コラーゲン分子、ヘッジホッグ経路関連分子”に着目し、その卵管内発現と卵管機能形態との関連を解析した。まず、MRL/lprでは、卵巣嚢と腹腔を繋ぐ卵巣嚢孔周囲に顕著なコラーゲンの沈着(線維化)がみられた。線維化は卵巣嚢孔の大きさや収縮能に影響を及ぼし、排卵卵子の腹腔内脱落に寄与する可能性を見い出した。次に、細胞増殖能を調節するヘッジホッグ経路関連分子の中で特にSmoothened(Smo)に着目した。ヘッジホッグ経路は気管運動線毛においてその線毛機能を調節することが示唆されているが、その卵管運動線毛における役割は不明である。一方、卵管ロート部においてSmoは、健常マウスと比較して自己免疫疾患の進行したMRL/lprで顕著に発現が低下することが分かった。卵管におけるヘッジホッグ経路の役割と、卵管の炎症及び卵子pick-up障害との関連性は大変興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は2019年度中にMRL/lprにおいて卵管上皮形態機能異常を招く実働分子の同定が完了している予定であった。しかし、当初卵管病態との強い関連を予想していたIL-6―Notch2経路に関して、MRL/lprにおいて卵管病態および卵管線毛機能形態との関連を明らかにできなかったことも合わせ、複数の候補分子からのターゲット分子の絞り込みに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヘッジホッグ経路関連分子(Smo, Ptch1, Gli1-3, Shh)に着目し、その発現低下が卵管病態へ及ぼす影響をマウス及びウシ卵管を用い明らかにする。具体的には、 ①ヘッジホッグ経路の卵管における生理的機能を推定するため、健常マウスとしてC57BL/6Nの卵管各部(ロート部、膨大部、峡部)を用い、性周期(発情前期、発情期、発情後期、発情休止期)に伴う当該分子の発現・局在変動をqPCR及び免疫組織化学で明らかにする。 ②健常マウスとMRL/lpr間で、卵管各部のヘッジホッグ経路関連分子の発現・局在を比較解析する。(①で性周期に伴う当該分子の発現変動がある場合は、性周期ごとの比較解析を行う。) ③ヘッジホッグ経路関連分子の卵管病態との関連を明らかにするため、抗炎症薬によって自己免疫疾患を治療したMRL/lprの卵管において、当該分子の発現及び卵管病態が改善するか検証する。 ④健常牛と子宮内膜炎牛の卵管サンプルを用い、ヘッジホッグ経路関連分子の発現・局在をqPCR及び免疫組織化学で比較解析する。以上より、当該分子の卵管異常マーカーとしての有用性を検証する。
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Causes of Carryover |
卵管病態に関与する分子の絞り込みに時間を要し、次年度においても実働分子候補の卵管・体液内mRNA及びタンパク質発現量および局在の解析を継続する必要があるため。
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