2019 Fiscal Year Research-status Report
Relationship between placenta derived parathyroid hormone-related protein in dairy cows and blood mineral concentrations in newborn calves
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19K23709
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
風間 啓 麻布大学, 獣医学部, 助教 (80845298)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | PTHrP / CaSR / 牛 / 胎盤 / カルシウム / 微量ミネラル / 胎子 / ICP-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は乳牛の胎盤を介したカルシウム(Ca)移行について、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)の生理的役割を明らかにすることを目的としている。また誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって血液中の微量ミネラルを測定し、胎盤を介したミネラル輸送について網羅的に分析し、健康な子牛の出生に寄与する技術の基礎を構築する。 本研究で用いたイムノラジオメトリックアッセイ法により新生子牛の血液からPTHrPを検出することができた。一方、母牛の血液中では検出限界以下であった。また、Ca、無機リン、ルビジウム、亜鉛は母牛よりも新生子牛血液中で高い値を示したが、銅、セレンは新生子牛よりも母牛血液中で高値であった。さらに、新生子牛の血液中PTHrPとCaの間に有意な負の相関が、マンガンとの間に有意な正の相関が認められ、コバルト、ストロンチウムとの間にはそれぞれ負の相関、正の相関傾向にあった。さらに、胎盤におけるPTHrP、ミネラル輸送に関与する因子の遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて解析したところ、PTHrP、PTH1型受容体は胎子胎盤よりも母胎盤で、CaSR、TRPV6およびLRP2は母胎盤よりも胎子胎盤で有意に高い発現が認められた。 以上の結果から、乳牛の胎盤においてもPTHrPはCa輸送に関与しており、Caの輸送に関わる因子としてTRPV6、LRP2が関与している可能性があった。また、一部のミネラルについて母子間で濃度勾配が認められたが、PTHrPが輸送に関与しているかは明らかにできていない。さらに、新生子牛血液中PTHrPとCaの間に負の相関があり、胎子胎盤でCaSRの高い遺伝子発現を認めたことから、胎子の血液中Ca濃度を胎子胎盤のCaSRが感知し、母胎盤のPTHrPの発現を調節している可能性があった。これらの研究の一部は現在投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血液中のPTHrP、ミネラル濃度の測定について、検体が十分に集まっていないものがあり、継続して検体の収集、測定を行う。 ウシ栄養膜由来培養細胞(BT-C細胞)について、現在培養条件を検討中である。BT-C細胞はI-C型コラーゲンコート上で増殖するが、接着が弱く安定した培養を得られていない。また、生理活性のあるウシリコンビナントPTHrPを単離できておらず、培養細胞におけるPTHrPの機能評価ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
血液中のPTHrP、微量ミネラル濃度の測定を継続して行い例数の増加を目指す。 また、胎盤においてCaの輸送に関わる他の因子として、plasma membane Ca2+ ATPase(PMCA)、calcium release-activated calcium channel protein 1 (ORAI1) などの発現量を調べる。 BT-C細胞の培養条件を検討するとともに、細胞のキャラクタライズを行う。BT-C細胞は接着が脆弱なため、コラーゲンゲル包埋培養法など、安定した培養を行える条件を検討する。安定した培養を得られたら、培地中のCa濃度を調整し、PTHrP、CaSRなどの遺伝子発現に影響があるかを調べる。さらに、生理活性を有するリコンビナントPTHrPを単離することを試み、得られたリコンビナントPTHrPを培養細胞に添加して、PTHrPが胎盤のミネラル輸送に関わる因子に与える影響を分析する。
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Causes of Carryover |
検体の採取のための旅費および採材費用を計上していたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため一時中止とした。伝染病の発生状況を見つつ、採材または学会発表のための旅費に充当する予定である。ただし、伝染病の発生が治まらない場合には論文の英文校正、投稿料に使用する。
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