2019 Fiscal Year Research-status Report
鉄イオンは如何にして安全かつ正確に細胞内輸送されるのか?
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19K23722
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
簗取 いずみ 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (40454847)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄 / シャペロン / 細胞内輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、二価鉄が細胞質ゾル内を安全な形で目的のタンパク質・細胞内小器官へと輸送される仕組みを解き明かし、酸化還元・呼吸をはじめとする細胞の生命活動の根源的テーマに取り組むものである。如何にして細胞が適切かつ安全に鉄を利用場所へ輸送するのか?細胞は鉄濃度の変化にどのように応答することで、機能維持を図るのか?という細胞レベルにおける鉄の『利用』・『分配』機構の解明を目指している。 初年度は、(1)小胞体ー細胞質ゾル間の鉄輸送機構の解明、(2)ミトコンドリア外膜での鉄輸送機構の解明を目指し研究を行った。 (1)小胞体膜上に存在する鉄輸送体候補分子の強発現及び発現抑制細胞を作成し、細胞質内及び小胞体内の鉄増減を解析したところ、強発現細胞と発現抑制細胞では逆の表現型を示し、この分子が鉄輸送に関与していることが裏付けられた。また、これまで代表者が明らかにしてきた鉄シャペロン分子との結合も確認され、この分子が鉄シャペロン分子との間で鉄の授受を行なっていることが示唆された。 (2)ミトコンドリア外膜での鉄の輸送方法は全くわかっていない。細胞質ゾル内の多くの鉄が鉄シャペロン分子に結合していることから、鉄シャペロン分子がミトコンドリアに輸送していることが予測できる。そこで、鉄シャペロン分子に結合するミトコンドリア分子の同定を試みた。質量分析法にて複数の候補分子を見出すことができており、現在、個々の分子について真の鉄輸送体としての機能があるかを解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定通り、小胞体-細胞質間の鉄輸送機構の解明、ミトコンドリア外膜上の鉄輸送機構の同定に取り組んだ。小胞体-細胞質間の鉄輸送に関わる分子を見いだすことに成功し、小胞体膜上で鉄輸送に関わる分子との関連性について解析を進めている。さらに小胞体膜鉄輸送体の強制発現細胞、発現抑制細胞を作成し、この輸送体が細胞全体の鉄ホメオスタシスに及ぼす影響について解析を進めている。 また、ミトコンドリア膜上の鉄輸送機構を解析するにあたり、これまで明らかにしてきた鉄シャペロン分子がミトコンドリアに鉄を輸送するという仮説に基づき、鉄シャペロン分子に結合するミトコンドリア膜上の分子の探索を行った。複数個の候補分子を見出すことができ、今後、さらに解析を進める予定である。 いずれも、ほぼ計画書通りに実験を進めることができていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、小胞体への鉄の輸送の制御機構を明らかにすると共に、小胞体での鉄の利用と細胞全体の鉄ホメオスタシスとの関連性を明らかにしていく。また、初年度に見出した鉄輸送分子以外の経路によっても小胞体へと鉄が輸送されている可能性が明らかになった。そこで、亜鉛や銅などの二価金属イオン輸送体として報告されている分子に、鉄輸送能が存在するかを二価鉄プローブにて解析を進める。そのために、すでに報告されている複数の金属輸送体の発現抑制細胞、強発現細胞を作成し、鉄輸送に変化が見られるかを解析する。 ミトコンドリア外膜での鉄輸送機構については、初年度見出した候補分子の発現抑制細胞を作成し、ミトコンドリアへの鉄の流入を蛍光プローブを用いて解析する。これにより、候補分子の中で鉄輸送能を持つ分子の同定を試みる。さらに、この分子と鉄シャペロン分子の相互作用、さらには、鉄欠乏・鉄過剰状態における候補分子の発現抑制機構について解析を進める。
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Research Products
(3 results)