2019 Fiscal Year Research-status Report
核膜タンパク質Lem2・Lnp1による核膜構造制御機構の解析
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19K23725
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
衣笠 泰葉 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (60852118)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | Lem2 / Lnp1 / 核膜 / 小胞体膜 / 脂質 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
核膜は核と細胞質を隔てる壁であるだけでなく、細胞活動に伴うダイナミックな発現変動を行う足場としても重要である。その中枢を担うのが核膜タンパク質であり、クロマチンとの相互作用を通じてクロマチン機能を制御する。しかし、核膜タンパク質は機能重複が多く、解析は困難を極める。本研究課題では核膜タンパク質Lem2とLnp1が核膜そのものの構造にも影響することに着目し、Lem2・Lnp1が核膜構造を制御する分子メカニズムを明らかにすることで、核膜タンパク質が核膜構造を介してクロマチンを制御する一連の仕組みの解明を目的としている。 昨年度は、蛍光タンパク質を付加した核膜マーカーを分裂酵母に発現させ、核膜形態を生細胞観察すると同時に、核移行シグナルを付加した蛍光タンパク質の局在変化について経時的な生細胞観察を行い、さらに蛍光顕微鏡と電子顕微鏡の利点を組み合わせた光―電子顕微鏡相関観察法を用いて、核膜形態の変異についてより詳細な観察を行った。その結果、Lem2・Lnp1が協調的に核膜構造や機能、さらには小胞体膜構造の維持に重要な役割を持っていることが明らかとなり、Lem2、Lnp1の機能ドメインについても同定された。 また、蛍光顕微鏡を用いた解析により、Lem2・Lnp1の機能が小胞輸送タンパク質複合体ESCRTの因子と密接に関係していることも明らかとなった。さらに、Lem2・Lnp1の機能相補を行う因子のスクリーニングにより脂質合成因子が同定されたことから、これらのLem2、Lnp1の機能は膜脂質の制御と関係している可能性についても示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、まず実施計画の一つであるLem2・Lnp1の欠損が核膜構造・機能に与える影響について、蛍光顕微鏡を用いた生細胞観察法と電子顕微鏡による解析を完了した。また、Lem2とLnp1の各ドメインの機能解析についても結果を得ることが出来た。さらに、実施計画のうちのESCRT複合体因子とLem2・Lnp1の機能的関係性についても蛍光顕微鏡を用いた解析により結果が得られたことから、研究計画は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、現段階で得られた結果を元に論文投稿を行っており、本年度も引き続き論文投稿作業を継続する。また、Lem2・Lnp1とESCRT複合体因子、さらにスクリーニングで得られたその他因子との機能的関係性について、引き続き解析を続ける。さらに、分裂酵母におけるLem2・Lnp1の機能がある程度明らかとなってきたことから、実施計画として予定していたヒト細胞での解析も開始する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画の遂行は順調だったため、試薬などの使用をかなり抑えることができた。次年度はさらに網羅的な解析を行う事や、ヒト細胞の実験系を開始することからも、より多くの消耗品や設備が必要となることを想定している。
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