2019 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌の染色体複製開始における複製ヘリカーゼの定方向性装着メカニズムの解明
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19K23729
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永田 麻梨子 九州大学, 薬学研究院, 助教 (60843787)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | DNA複製開始 / ヘリカーゼ / 複製起点 / 二重鎖開裂 / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
両方向複製のために2分子の複製ヘリカーゼが複製起点上で適切な配置をとるという原理は、おそらく細胞性生物で共通だと考えられるが、複製起点への複製ヘリカーゼ装着の分子機構は不明な点が多い。大腸菌においても、複製ヘリカーゼであるDnaBが染色体複製起点oriCへどのような制御により装着するのか明らかではない。大腸菌oriCは、複製開始タンパク質DnaAの結合配列のクラスター領域(DOR)と、二重鎖DNA開裂領域(DUE)とで構成される。DORはDnaA boxの配置に依存して左、右、中央に分けられ、左側DORにはDNA屈曲因子IHFが結合する。左右それぞれのDORではDnaAが五量体となるサブ複合体が形成される。左側のDnaAサブ複合体はIHFによるDNA屈曲と協調してDUEを開裂し、生じた一本鎖DNAと結合する。そしてDnaA 複合体との相互作用を介して複製ヘリカーゼDnaBが一本鎖DNAへ装着されることで複製が開始する。右側DnaAサブ複合体がなくてもDnaB装着は可能だが、その効率は半減する。また、DnaB装着時の一本鎖化には、従来定義されていたDUEだけではなく、その周辺領域も重要である。そこで、DnaBが装着するメカニズムの解明に向け、本研究ではDnaB装着時のDUE一本鎖化や右側DnaAサブ複合体の役割を調べている。2019年度は、右側DORやDUEに部分欠失・変異を加えたoriCを作成し、in vitro再構成系で、DnaB装着前後の一本鎖化領域を調べた。その結果、DnaB装着過程において、右側DnaAサブ複合体が一本鎖化領域の拡張を補助していることが示唆された。さらに、DnaB装着前後でのDUEおよびその周辺領域の一本鎖化には、複数のタンパク質間相互作用も関与する可能性を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画時に想定していた、oriCの一本鎖領域ヘのDnaB装着部位を同定しようと、一本鎖DNAの特定塩基を修飾する過マンガン酸カリウムなど、複数の試薬を用いて検討した。その結果、過マンガン酸カリウムを用いることで、片側の鎖の一本鎖化領域とDnaB装着部位は検出が可能になった。一方、その相補鎖では修飾される塩基配列の偏りなどにより、それらの検出が困難だった。変異導入などによって改善を検討したため、時間がかかってしまった。したがって、検出可能な片側の鎖の解析を優先的に進めることにした。また、一部の技術の確立に予想以上に時間がかかったこともあり、予定より進捗が遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、構造変化の検出が可能な片側の鎖の解析を優先的に進め、DnaB装着前後のDNAの構造変化を明らかにする方策で推進している。2019年度得られた結果をもとに、過去の実験結果との整合性に注意しながら、引き続き、DUE一本鎖化と右側DnaAサブ複合体の役割に焦点をあてた解析を進める。DnaAなどのタンパク質のoriCへの結合が、一本鎖化領域の拡張に関与している可能性も考え、関連因子の変異体も取り入れた解析を展開する。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が予定より遅れたことと、3月末の学会出張が新型コロナウイルスの影響により中止となったため。2020年度は研究発展のために、物品購入費、学会および論文発表費に使用予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Dynamic mechanisms of higher-order complexes for replication initiation and regulation of the E. coli genome2019
Author(s)
片山勉, 三善賢弥, 林千尋, 吉田竜星, 杉山諒, 酒井隆至, 崎山友香里, 加生和寿, 川上広宣, 尾崎省吾, 永田麻梨子
Organizer
第92回日本生化学会大会
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