2019 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集法によるmKastを介したミツバチ行動制御機構の多階層的な解明
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19K23740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 大輝 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60846773)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | セイヨウミツバチ / 社会性行動 / ゲノム編集 / キノコ体 / ケニヨン細胞 / mKast |
Outline of Annual Research Achievements |
セイヨウミツバチは、高度な社会性行動を示す。これまでに、昆虫脳の高次中枢であるキノコ体に着目した研究が多く行われてきたが、有効な遺伝子操作法の不足から、社会性行動を制御する分子神経基盤はほとんど解明されていない。本研究では、感覚情報処理を介して成虫脳の高次機能を制御する可能性がある遺伝子mKastに着目し、ゲノム編集法を用いた遺伝子ノックアウト・ノックインを利用することで、社会性行動制御における機能を多階層的に解析することを目的とする。 本年度は、まずゲノム編集法によるmKast変異ミツバチの作出を試みた。これまでに、インジェクションした受精卵をモザイク女王蜂(F0世代)に分化させ、モザイク女王蜂から変異雄蜂(F1)とヘテロ変異働き蜂(F2)を作出することには成功していた(Kohno and Kubo 2018)。しかし、F1世代の変異雄蜂の作出効率が低く、人工授精による継代に問題があった。今年はインジェクション法を改良することでF0世代での変異率が向上し、体細胞の半分以上が変異細胞であるモザイク女王蜂を作出することができた。そして、これらのモザイク女王蜂に野生型雄蜂の精子を用いて人工授精することで、ヘテロ変異体女王蜂の作出に初めて成功した。さらに、これらのヘテロ変異体女王蜂から変異雄蜂(F2)を効率的に作出することができ、変異雄蜂由来の精子を凍結保存することができた。 mKastは雄蜂の脳でも働き蜂と同様の発現パターンを示し、また雄蜂は交尾飛行からの帰巣という高度な視覚情報処理を必要とする行動を示すことから、ヘテロ変異体女王蜂由来の変異雄蜂を用いた行動解析も進めている。また、ゲノム編集法を利用したノックイン法についても複数の手法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘテロ変異体女王蜂、及び変異雄蜂を効率的に作出することができており、ホモ変異体働き蜂の作出は時間の問題である。変異体の解析に用いる行動実験系も嗅覚と視覚の連合学習系を確立済みである。また、ノックイン法についても、ゲノム上の標的部位へノックインが生じた場合のみ検出されるPCR増幅バンドも検出されており、条件検討次第でmKast発現細胞においてレポーター遺伝子を発現させることが出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
凍結保存済みの精子を用いた人工授精を繰り返すことで、ホモ変異体働き蜂を作出する。これらホモ変異体を用いて様々な行動解析を行い、mKastが関与する行動を同定する。また、mKastは膜タンパク質の活性を下方制御するα-アレスチンファミリーに属することから、ホモ変異体では相互作用するタンパク質の相対的な量が増加していることが予想される。ホモ変異体の脳サンプルを用いた定量的ショットガンプロテオミクスを行うことで、mKastが制御するシグナル伝達系を同定する。さらに、既にある程度有効性が確認されているノックイン法の条件検討を行い、効率的な遺伝子導入を達成できれば、mKast発現細胞の投射パターンの解析を行うことで、mKastが制御する行動に関わる神経回路についての知見を得られると考えている。
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Research Products
(3 results)