2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23758
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
植木 紀子 法政大学, 法学部, 教授 (80415116)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 多細胞化 / 鞭毛・繊毛 / ボルボックス目 |
Outline of Annual Research Achievements |
光反応行動は周囲の光情報を感知して最適環境を選ぶ応答であり、光合成生物にとって生存に深く関わる。緑藻ボルボックス目に属する多細胞生物は、細胞どうしは直接的な情報交換を行わないにも関わらず、個体全体として調和のとれた動きをする。本研究は、このような多細胞生物としての巧みなシステムが、単細胞生物から細胞数を増加させる進化の過程でどのように段階的に獲得されていったのかを明らかにすることを大きな目標としている。そのために、本研究課題ではボルボックス目に見られる多細胞化進化の中間過程にあると言えるユードリナを中心に光反応行動の特徴を明らかにし、細胞数の異なる種の間で比較するというアプローチをとった。今年度はまず、緑藻ボルボックス目の培養システムを立ち上げるとともに、上記目的に最適な株と培養条件を検討・選定した。そして、Eudorina elegans(16-32細胞)、Volvox carteri(約2,000細胞)、V. dissipatrix(約20,000細胞)の三種について、暗室内にて、高速度カメラで鞭毛運動を観察した。観察光には赤色光(>630nm)を用い、照射から反応開始までの時間、反応持続時間、鞭毛打頻度等を定量的に求めた。これまでのところ、直径が数十から数百マイクロメートルの小型の多細胞種は光照射に対して鞭毛運動を停止させ、それ以上の大型の多細胞体制の種は停止させずに方向変化を起こすことが観察されている。鞭毛運動の方向変化はより大きな個体の動きを制御するのに効果的であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は、新しく立ち上げた研究室にて行うものであり、藻類培養装置の組み立て・培養条件の検討・光を用いる実験に必要な暗室等設備の整備などに想定以上の時間を費やすこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
数千細胞からなるボルボックスでは個体の前後で鞭毛の光反応性に勾配があることがわかっている。今後は、それよりはるかに細胞数の少ないユードリナ一個体の前後にかけて、鞭毛の性質に差があるのかを検証する予定である。さらに、細胞膜を界面活性剤で取り除きATPを加えて運動を再活性化する実験をユードリナに対して行い、ユードリナ鞭毛の基本性質とカルシウムイオンに対する反応性を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本研究は新たに着任した場所での開始であり、開始時は利用可能な設備が未定の状態であったため。次年度に当初計画していた実体顕微鏡を購入する予定である。
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