2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞単離とライブセルイメージングを基盤とした精細胞移行RNAの機能解析
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19K23759
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
元村 一基 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (50844049)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | RNA / 花粉 / 細胞単離 / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は精細胞へ細胞間移行するRNAを”精細胞移行RNA”と定義して、移行するRNAの選択性やその機能を明らかにすることである。これまで研究代表者が培った「精細胞単離技術」と「ライブイメージング技術」を基盤にして本目的に迫る。これまで精細胞移行RNAの存在はほとんど報告されてこなかった。その原因は花粉が他の組織に比べ小さく扱いづらく、また生殖細胞は単相体で致死性表現型が出やすく順遺伝学で原因遺伝子が取れないことなどが考えられる。そこで研究代表者は「人為的に精細胞へのRNA移行を阻害したミュータント花粉」を作出した。この花粉も致死となりホモ接合体は使用できなかったが、目的の細胞だけ単離する技術を開発してホモ接合体に依存しない実験を実現した。このアプローチは前述した問題点の解決にとどまらず、網羅的な精細胞移行RNAの同定を可能にする。 この目的のため、まず細胞移行RNA同定のため植物を育成して回収した花粉を用いて、野生型花粉と変異体花粉それぞれの精細胞の単離に成功した。その後それぞれに含まれるRNA種をトランスクリプトーム解析で比較した。その結果、野生型精細胞に比べ、変異体花粉中の精細胞では数百種類のRNAが有意に減少していることが明らかとなった。これらが本研究で明らかとなった、精細胞移行RNA候補である。 また、この花粉研究に関連して、花粉で遺伝子発現制御に関与するタンパク質NOT1の機能解析も併せて行い、植物の花粉形成において、ネガティブな遺伝子発現制御が重要な役割を果たすことをはじめて明らかにした。 これらの研究成果を複数の学会で発表した。更にNOT1の研究内容を論文としてまとめ、査読付き論文として国際誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では精細胞移行RNAの種類とその特徴を明らかにすることが第一の目的である。これを達成するため、これまで日本では報告例のない、単離した精細胞を用いたトランスクリプトーム解析に挑戦して、リーズナブルな結果を得ることができた。この結果を今後解析することで、精細胞移行RNAが明らかとなり、その特徴に関しても推察することが可能になると考えている。 更にこれに関連して花粉でRNAレベルの遺伝子発現制御を行うNOT1の機能解析も行った。その結果このタンパク質が花粉のRNAの蓄積に重要な影響を与えることが明らかとなった。 これらの結果はRNA細胞間移行・植物の生殖研究の両分野に重要な知見を与えるものである。 研究代表者はこれらの成果を査読付き国際論文「AtNOT1 is a novel regulator of gene expression during pollen development」や、多くの学会等で発表することで本研究成果をアピールした。 以上のようにおおむね予定通りの研究結果が出ており、更にそれを広く世界にアピールすることにも成功しているため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、I. 精細胞移行RNAの種類とその特徴、II. その生理学的意義、の二点を明らかにする予定である。項目Iの続きとして、同定した精細胞移行RNA候補から、精細胞移行RNAの配列や核酸の二次構造など共通する特徴を見つける。そして人工的に合成したRNAにその共通する特徴を付加することで、任意のRNAが精細胞移行RNAに変化するかどうかを検討する予定である。 この研究とは独立して、項目IIでは変異体花粉の表現型から精細胞移行RNAの生理学的意義を明らかにする。変異体花粉は致死表現型を示したことから、半数が変異体花粉となるヘテロ接合植物の花粉を野生型のめしべに交配した。すると半数の種子が典型的な受精異常表現型である不稔となることが分かり、この予備実験結果からも前述の仮説の通り精細胞RNA移行が受精に必須の機能を担っている可能性が高い。どの発生段階で異常が起きるのか観察して、表現型から精細胞移行RNAの役割を推察する。更に同定した精細胞移行RNAの中から、この表現型の原因を推察してノックアウト植物を作出し、変異体花粉が致死となる遺伝的要因にも迫る。 もし項目Iで分かった精細胞移行RNAの特徴が曖昧である場合、項目IIの表現型解析結果から意味のあるRNAの細胞間移行を推察して、精細胞移行RNA候補のさらなる絞り込みを行う。以上のようにIの精細胞移行RNA自体の解析とIIの変異体花粉の生理学的な解析、相互の結果をフィードバックしながら研究を進める。 また、本研究で用いている変異花粉の表現型観察も進めることで、RNA細胞間移行の生理学的意義についても考察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で予定していた出張や実験が延期されたため。これらの実験や出張は今年度に行う予定である。 これらの助成金は推進方策に記載した実験を行うため、人工RNA合成に必要な試薬や、花粉培養機材等に使用する。
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[Journal Article] AtNOT1 is a novel regulator of gene expression during pollen development2020
Author(s)
Motomura K , Arae T , Uramoto HA , Suzuki Y , Takeuchi H , Suzuki T , Ichihashi Y , Shibata A , Shirasu K , Takeda A , Higashiyama T , Chiba Y
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Journal Title
Plant & cell physiology
Volume: 61
Pages: 712-721
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] ポリA分解複合体の足場タンパク質であるAtNOT1は花粉発生中に起こる遺伝子発現変動に重要な役割を果たす2020
Author(s)
元村 一基, 荒江 星拓, 鈴木 悠也, 武内 秀憲, 鈴木 孝征, 市橋 泰範, 柴田ありさ, 白須 賢, 竹田 篤史, 東山 哲也, 千葉 由佳子
Organizer
第61回日本植物生理学会
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[Presentation] ポリA分解複合体AtCCR4-NOTは花粉の発生に必須の新奇RNA代謝制御因子である2019
Author(s)
元村 一基, 荒江 星拓, 鈴木 悠也, 武内 秀憲, 荒木 春花, 鈴木 孝征, 市橋 泰範, 柴田ありさ, 白須 賢, 竹田 篤史, 東山 哲也, 千葉 由佳子
Organizer
第8回植物RNA研究ネットワークシンポジウム
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