2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis on micro domain formation during xylem differentiation using in vitro differentiation system
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19K23760
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
藤田 智史 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 博士研究員 (50844099)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 植物細胞生物学 / リグニン / マイクロドメイン / 細胞壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物において細胞壁は細胞に機械的な強度を与え細胞同士をつなぐ構造物であるが、その構成は均一なものではなく、細胞種や細胞のサブドメインによってその組成が異なることが知られている。この違いはそれぞれの細胞分化にも密接に関係しており、顕著な例としては根毛やトライコーム、花粉管といった先端成長を行う細胞があげられる。これらの細胞は細胞の一部が盛んに伸長するためそこでは細胞壁の劇的な再編成が起こる。細胞壁の変化は伸長に伴ったものだけではなく、他の現象においても見られる。道管細胞は植物個体を支えるための物理的強度を確保するために二次細胞壁として多量のリグニンを蓄積する。しかしながら、このリグニンの蓄積は道管細胞に一様に蓄積するわけではなく、細胞外の空間にパターンをもって蓄積する。細胞外空間には明確な仕切りがないことから何らかの制御が細胞膜を挟んで細胞内から制御していると考えられているがその詳細な機構は不明な部分が多い。 本研究では細胞外空間を如何にして細胞内から制御するかを明らかにするために、その足場となりうる細胞膜上のドメインの形成過程について明らかにすることを目的としている。具体的には、small GTPaseであるROPが道管細胞特異的に形成する細胞膜上のドメインにどのような因子が集合しているかを解析する。スクリーニング系としてProximal labeling法を用いる。この方法は、複合体を単離する免疫沈降とは異なり、相互作用をしていなくても周囲10nm程度に存在するタンパク質を無差別にビオチン化することで、周辺に存在するタンパク質を網羅的に同定する方法である。これまでに解析に必要な植物体の樹立に成功したものの生化学的解析に十分な量の種子を得るために増やしている段階である。また培養細胞の形質転換は難航しており今のところ解析に必要な形質転換株は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で注目している後生道管細胞における壁孔ドメインに存在するタンパク質を網羅的に明らかとするための材料づくりを進めている。現在は、道管細胞に分化可能な培養細胞および道管細胞特異的に必要なツールを発現させた植物個体の作出を目指している。Proximal labeling法によるスクリーニングを行うためにROPドメインに特異的に局在するMIDD1タンパク質が特異的に局在するMIDD1タンパク質にGFP-TurboIDを融合させ形質転換を行っている。植物個体の方は順調に進んでおり、期待通りに局在を示す材料が作出できた。生化学スクリーニングには多量の材料が必要となるため現在材料を得るために植物を生育中である。一方培養細胞のほうは形質転換に問題があり、期待する材料が得られていない。今後はコンストラクトを変更して形質転換を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでUBQ10プロモーターを用いたコンストラクトをシロイヌナズナ培養細胞に形質転換することを計画していたが、形質転換効率に問題があることが疑われた。そこで35SプロモーターもしくはG10-90プロモーターを用いた誘導系を用いるコンストラクトに切り替えているところである。形質転換培養細胞が樹立でき次第、Proximal labeling法の条件検討を進める。培養細胞の樹立が難航しているためバックアップとして作成していた植物体を材料にして実験を進める方向も考えている。現在、道管細胞特異的にGFP-TurboID-MIDD1を発現させたラインを作成中であり、T2でROP domainに局在していることを確認した。4か月後には実験に十分な量の材料を確保できる見込みである。コントロールとして作成している細胞膜全体および細胞質全体に局在するラインも同時期に得ることができる。ビオチン化の条件などの条件は、既存の報告に従って行う予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度は解析に必要な材料の作成を主に行ったこと、また培養細胞の形質転換が予想より難航していることから生化学的解析にすすむことができなかった。2020年度においては予定していた生化学解析を現在作成中の植物体で行うため、繰越金を生化学試薬などの購入に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)