2019 Fiscal Year Research-status Report
イチヤクソウ亜科で生じた菌従属栄養性進化の定量的な追跡
Project/Area Number |
19K23762
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
首藤 光太郎 北海道大学, 総合博物館, 助教 (60803723)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | イチヤクソウ亜科 / 菌従属栄養植物 / 進化 / アルビノ |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道札幌市近郊,青森県,福島県,神奈川県等で,研究対象とするイチヤクソウ亜科数種の集団を探索するための現地調査を行った。審査結果の開示から降雪までの時間が十分でなかったため,予定していた形態調査とサンプリングは今年度は行わず,集団の探索を優先することとした。これらの現地調査の結果と申請者がこれまでに蓄積した分布情報によって,研究対象の候補となる集団が概ね絞られ,冬季は次年度以降の調査準備に充てた。次年度は,これらの集団で当初の予定通りサンプリングと形態調査を行い,安定同位体比分析(δ13Cおよびδ15N)を順次行っていく予定である。 北海道札幌市で発見したイチヤクソウの白化個体(アルビノ)を報告し,安定同位体比から菌従属栄養性を評価した報文を投稿し,受理された。報告した白化個体の安定同位体比は,本課題で扱うイチヤクソウ亜科の菌従属栄養性を評価する上で,完全菌従属栄養状態の参照値として機能し得る。このような白化個体はこれまでイチヤクソウ亜科では報告されていなかったため,これまでの研究計画においては,他亜科の完全菌従属栄養植物の安定同位体比を参照値として利用せざるを得なかった。研究対象と同所的に生育する他亜科の完全菌従属栄養植物と,報告した白化個体の安定同位体比を併用することにより,より正確に研究対象の菌従属栄養性を評価することが可能になる。 この報告について学会発表を行う予定であったため,練習のため合同セミナーを企画し発表を行った。しかし,発表を行う予定であった日本植物分類学会第19回大会(岐阜大会)は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
審査結果開示の季節を考慮すると本年度はサンプリング・葉の計測よりも研究対象とするイチヤクソウ亜科集団の絞り込みを行った方がよいと考えられたこと,本課題の進行にあたりイチヤクソウの白化個体についての報文を先行して発表する必要があったことから,当初の予定よりも進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の理由により進行が遅れているが,優先すべき報文も発表できたため,研究内容に変更はない。今年度,当初の予定通り研究対象とした集団においてサンプリングおよび形態調と安定同位体比分析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
予定を変更し今年度は各種分析を行わなかったことに加え,発表予定であった日本植物分類学会第19回大会が新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となり,残額が生じた。研究内容に大きな変更はないため,これらの残額は今年度に行う予定であった各種分析や,サンプリングのための現地調査旅費に充てる予定である。
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Remarks |
図書は分担執筆であり,陸上植物の章を担当,本課題の成果の一部を掲載した。
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