2020 Fiscal Year Annual Research Report
一夫一妻の鳥類における優れた配偶者を巡る雌間競争の進化と機能の解明
Project/Area Number |
19K23764
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西田 有佑 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (70845916)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 性選択 / モズ / 貯食行動 / 一夫一妻 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
繁殖投資理論によると、両親で子育てし、繁殖投資量の性差の小さい一夫一妻の種では、雄間競争、雌間競争、雌雄の相互配偶者選択が生じるとされる。さらには、雌雄それぞれが自身の適応度を最大化しようと、雌雄間の利害対立も同時に生じると予想される。一夫一妻は最も複雑な性淘汰の仕組みをもつ配偶システムである可能性があるが、検証例は少ない。モズは両親で子育てする一夫一妻の鳥類である。モズのペアボンドは交尾後の時期は強固になるが、交尾前の時期は不安定であるため、交尾前後の時期で性的対立が生じる可能性がある。モズの雄は捕らえた獲物を木々の枝先などに突き刺して、「はやにえ」を貯える習性をもつ。このはやにえを巡って性的対立が生じていることを発見した。繁殖期の雄のはやにえ行動を観察した結果、雄は交尾前の時期には90.1 ± 15.1%のはやにえを「隠蔽貯蔵」したが、一方で交尾後の時期には89.8 ± 17.6%のはやにえを「開放貯蔵」した。隠蔽貯蔵と開放貯蔵のはやにえの消費者の性別を観察した結果、隠蔽貯蔵のはやにえの97.5 ± 7.1%は雄自身が回収したが、開放貯蔵のはやにえの57.7 ± 33.4%は雄が回収し、残りは雌が回収した。よって、モズの雄は、ペア関係の不安定である交尾前の時期には、はやにえを雌に回収されないように隠蔽貯蔵しており、ペア関係の安定する交尾後の時期には、はやにえを雌雄でシェアすることが分かった。すなわち、はやにえの隠蔽貯蔵は性的対立によって進化した行動であることが明らかになった。
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