2019 Fiscal Year Research-status Report
単細胞真核生物の世代交代における表現系切換えのエピジェネティクス制御
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19K23767
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
廣岡 俊亮 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特任研究員 (70843332)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 単細胞真核生物 / 世代交代 |
Outline of Annual Research Achievements |
エピジェネティクスはDNAの塩基配列の違いによらない遺伝子発現の多様性を生み出すしくみであり、細胞分化、トランスポゾン、外来ゲノム配列の不活化等において重要な役割を果たしていることが明らかにされてきた。ヒストン修飾による遺伝子発現制御は真核生物特有のエピジェネティクス機構であり、中でもポリコーム複合体2 (PRC2)を介したH3K27me3修飾による遺伝子発現抑制は多細胞生物における個体発生、細胞分化に関わる重要なヒストン修飾である。一方、単細胞真核生物におけるH3K27me3修飾の主な役割は、外来配列の不活化であると考えられてきた。しかしながら最近、独自に株の樹立及び遺伝的改変技術の開発を進めてきた単細胞真核生物において、H3K27me3修飾が世代交代における表現系切換えに関わる可能性を見いだした。本研究では、これまで適切な研究材料の欠如により未解明であった、単細胞真核生物におけるエピジェネティクス制御による世代交代の表現系切換え機構を解明することを目的とする。 本年度は対象とする単細胞真核生物の1倍体、2倍体の比較トランスクリプトーム解析を行い、1倍体特異的に発現する遺伝子群、2倍体特異的に発現する遺伝子群をそれぞれ同定することが出来た。さらに、抗H3K27me3抗体を用いたChIP-qPCR解析を行い、2倍体特異的に発現する遺伝子が1倍体においてのみ、H3K27me3修飾を受けていることを見いだした。本結果は、H3K27me3修飾による遺伝子群発現制御機構によって、2倍体(発現ON)と1倍体(発現OFF)の表現型が切換えられる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とする単細胞真核生物において比較トランスクリプトーム解析、ChIP-qPCR解析を行い、2倍体特異的に発現する遺伝子群が1倍体において、H3K27me3修飾により発現抑制を受けている可能性を示すことが出来た。従って、研究は計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、H3K27me3修飾を受けている遺伝子を網羅的に明らかにするために、ChIP-seq解析を行う。また、H3K27me3修飾を介した遺伝子発現制御においては、他のヒストン修飾とのバランスも重要であることが他生物で明らかとなっているので、H3K4me3、H3K9me3、H3K36me3等の代表的なヒストン修飾についてもChIP-seq解析を行い、1倍体、2倍体の特異的発現遺伝子が、それぞれどのようなヒストン修飾を受けているのか、各修飾と遺伝子発現の抑制・活性化にどのような相関関係があるのかを明らかにする。さらに、H3K27me3修飾に関わるポリコーム抑制複合体2(PRC2)のヒストンメチル化酵素E(z)の遺伝子破壊株を作成し、遺伝子発現や形態変化等の表現系への影響を解析する。
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Causes of Carryover |
解析用コンピューターの購入費用を当初想定していた額より抑えられた為、次年度使用額が生じた。これについては、次年度に予定している遺伝子破壊株作製に必要な試薬等の購入に充てる予定である。
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