2020 Fiscal Year Annual Research Report
脳障害後の神経回路再編における時空間的・神経活動依存的な遺伝子発現の包括的解析
Project/Area Number |
19K23773
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 時春 新潟大学, 脳研究所, 特任助教 (40542387)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 神経回路 / 再編 / 脳神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳が損傷をうけると神経回路は破壊され、一部で代償性の回路が作りだされ、機能を回復させることが近年わかってきた。しかし、再建をうながす因子が、いつ、どの細胞で発現し、機能しているかについては明らかにされていない。本研究では、脳梗塞を損傷のモデルとし、運動を司る皮質脊髄路に着目して、遺伝子発現と神経活動のダイナミクスを損傷後の時間軸に沿って、さらには回路や細胞種といった空間軸に沿って調べることにより、回路再編の動作原理を理解するための時空間的な遺伝子発現マップを構築することを目的とする。 脳梗塞後の時間的・空間的な遺伝子発現解析を行うため、脳梗塞モデルマウスを用いて梗塞後3、7、14および28日目の脊髄から細胞特異的にmRNAを抽出し、R N Aシークエンス法により、神経細胞、アストロサイトおよびミクログリアの時系列トランスクリプトームデータを取得した。まず、梗塞後3、7、14および28日目における発現変動遺伝子(Differentially Expressed Genes; DEGs)の解析を行い、時系列なDEGsを抽出することに成功した。その結果、梗塞後に発現が一過的に増加または低下する遺伝子群や持続的に発現が増強および抑制される遺伝子群が存在することが明らかとなった。また、神経活動に依存した遺伝子発現を解析するため、本研究で確立した運動トレーニングを脳梗塞モデルマウスに実施させた後、mRNAを抽出し、RNAシークエンスを行った。その結果、リハビリテーションにより発現変動する遺伝子群が存在することを見出した。今後は、得られた経時的な遺伝子発現データを遺伝子オントロジー解析、エンリッチメント解析により、GEDsの特徴をより詳細に解析すること、また、再建をうながす因子の同定および機能解析を行っていく必要がある。
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