2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規エピゲノム編集技術を用いた脳内ストレス感受性制御のマルチスケール解析
Project/Area Number |
19K23775
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂井 祐介 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (40843066)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ストレス / うつ病 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、精神疾患発病脆弱性に関わるストレス感受性の脳内メカニズムを解明することである。具体的には、遺伝・環境相互作用に起因するうつモデルマウスにおいて、特定のゲノム領域におけるエピジェネティクス異常を検討し、その異常を正常化させることが可能な新規エピゲノム編集技術を確立する。エピゲノム編集技術の介入によって、ストレスレジリエンスの獲得や抗うつ作用を発揮することのできる制御法を開発し、ストレス性精神疾患の構成的理解ならびに新たな治療法の確立につなげる。 遺伝・環境相互作用に起因するうつモデルマウスの腹側海馬におけるカルシウム・カルモデュリン依存性キナーゼIIβ遺伝子(Camk2b)の発現低下と、そのゲノム領域におけるエピジェネティクス修飾異常を見出した。また、Camk2b遺伝子過剰発現マウスはストレスレジリエンスを、逆にCamk2b遺伝子ノックアウトマウスはストレス感受性が増大することを確認し、Camk2bのストレス感受性制御に対する役割が明らかとなった。さらにCamk2b遺伝子上のDNAメチル化レベルが慢性ストレス負荷によって変化することを見出し、このエピゲノム修飾を正常化させるためのウイルスベクターの構築が完了した。このウイルスベクター投与マウスの細胞・可塑性・行動レベル(ストレス対処行動)への影響の解析した結果、Camk2bのエピゲノム操作によるCamk2b発現の低下とストレス対処行動変容、すなわちストレス感受性の亢進を確認した。以上の結果から、エピゲノム変容と行動制御との直接的な関連が示された。
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