2019 Fiscal Year Research-status Report
脳内ストレス適応機構の個体差・性差発現に関わる分子・神経基盤解析
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19K23776
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
李 海燕 京都大学, 医学研究科, 研究員 (90840314)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ストレス / うつ病 / 性差 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、遺伝・環境相互作用に起因する精神疾患発症脆弱性の性差構築の分子神経メカニズムを解明することである。精神疾患の発症リスクと想定されているストレス脆弱性の創発基盤を脳内エピジェネティクス制御の視点から明らかにする。これまでに見出しているストレス脆弱性に関わるエピジェネティクス制御分子のヒストンリジン脱メチル化酵素(KDM5C)に着目し、KDM5Cによるストレス脆弱性の性差が、いつ・どこで・どのように構築されているか、その分子・神経メカニズムの解明をめざす。特定の神経回路選択的に遺伝子操作・神経活動操作が可能な分子技術を用いて、分子・神経回路・行動レベルの多階層からのアプローチにより、脳内ストレス適応機構の体系的理解をめざす。2019年度の成果として、メスマウス脳内(内側前頭前野)におけるKDM5Cの発現増大を確認した。また、 メスマウスとオスマウスに対して慢性ストレスを負荷した結果、オスマウスにおいては行動異常を認めなかったものの、メスマウスはうつ様行動が増加していた。同様のストレッサーを負荷しているにも関わらずメスマウスにおいてのみ行動異常を認めたことから、メスマウスはオスマウスに比べてストレス感受性が亢進している可能性が示唆された。 KDM5Cとストレス感受性との関連を調べるために、KDM5C過剰発現オスマウスに閾値下慢性ストレスを負荷し、行動評価を行った。その結果、KDM5C過剰発現マウスにおけるストレス感受性の亢進が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メスマウスにおけるストレス感受性の亢進とその原因分子としてKDM5Cの存在を強く示唆する結果を得た。特に、KDM5C過剰発現マウスにおいては、定常状態では行動異常を示さないものの、閾値下慢性ストレス負荷後ではうつ様症状を示し、ストレス脆弱性を規定する分子であることが伺える成果であった。メカニズム解析へと進める強固なエビデンスが得られたため、順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定した研究計画通り、ストレス脆弱性形成の臨界期を同定し、責任神経回路の同定を試みる。このための実験系は既に構築済みであり、申請書に示したロードマップに沿った研究を行える体制を整えている。
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