2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K23783
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
古部 瑛莉子 旭川医科大学, 医学部, 助教 (30845566)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | Salt-inducible kinase 3 / 睡眠 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
野生型マウスにグラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)を脳室内投与することにより脳内炎症を誘導した場合、覚醒時間が減少し、睡眠深度の指標であるNREMデルタ密度の増加、NREM睡眠時間の増加、REM睡眠の顕著な減少が見られたが、睡眠制御分子として知られるリン酸化酵素Salt-inducible kinase 3(SIK3)のリン酸化機能を向上させたsleepyマウスではそれらの変化は有意に抑えられていた。LPSを脳室内投与した際のSIK3発現細胞について免疫組織学検討を行ったところ、SIK3を発現しているのは神経細胞であり、神経細胞のSIK3が脳内炎症時の覚醒・睡眠制御機構に関与している可能性が示唆された。さらに、視床下部外側野(LH)においてSIK3のリン酸化標的であるヒストンデアセチラーゼ4(HDAC4)の核内移行が抑制されていたことからLHの覚醒・睡眠制御に関わるオレキシン神経がその制御に関わっている可能性が考えられる。オレキシンは、神経ペプチドの1種でありLHに限局する神経細胞に局在している。LHのオレキシン神経は小脳を除く中枢神経系の全域にわたって投射しており、覚醒・睡眠機構に関与する脳幹のモノアミン作動性神経、コリン作動性神経、視床の室傍核などに投射がみられる。また、末梢および脳室内投与されたオレキシンが、エンドトキシンショックを起こしたマウスの生存率を改善することが報告されている。LPS投与後の脳内でのSIK3の発現が神経細胞にのみ認められたことから、本研究で見られたLPS脳室内投与によるLHでのSIK3下流に存在するHDAC4の活性化の抑制は、SIK3がオレキシン神経による覚醒・睡眠制御および炎症抑制経路に関わっている可能性を示唆している。
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