2020 Fiscal Year Research-status Report
大規模単一神経活動記録による自発活動と触知覚神経活動の関連の探索
Project/Area Number |
19K23788
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上森 寛元 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (90845900)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 神経科学 / 2光子カルシウムイメージング / 触知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自発活動中の広域でのマウス大脳皮質2/3層の神経活動が後肢刺激に対する知覚時の神経活動に対して与える影響を調査することである。 昨年度は、主に広域で安定してカルシウムイメージングを行うための条件を検討し、様々なカルシウムセンサーやその濃度を検討した結果、G-CaMP7.09を用いた方法を最適と判断した。 今年度はその確定したセンサー導入条件によって個体を準備し、広視野顕微鏡下での知覚課題のセットアップの立ち上げと、知覚課題中の広視野カルシウムイメージングを行った。さらに、自発活動時と後肢刺激時の神経活動を比較するため、後肢刺激時に安定して活動が生じる神経細胞群(アンサンブル)を検出するような解析法を確立した。このアンサンブルは、記録された神経活動全体から、多数の神経細胞の活動が類似しているタイミングを抽出するような解析である。その解析を行った結果抽出されたアンサンブルは、知覚課題のHit時に大きく活動し、課題のMiss時には活動がほとんど生じないことがわかった。また、このアンサンブルは広域に分布しており、特定の脳領域への顕著な分布傾向は見られなかった。このことは、広域の神経細胞群が知覚の表現に寄与していることを示唆する。さらにHit時とMiss時の神経活動を詳しく調べるため、主成分分析を用いた次元削減に基づく低次元解析を行った。その結果、主成分分析の上位3次元空間においてHit時のトライアル内の神経活動がある一定の軌道に沿って生じることがわかった。Miss時のトライアルではそのような傾向は見られなかった。以上のように、Hit時とMiss時では広域における神経細胞群の活動が大きく異なっていることが分かった。 今後は、HitとMissが起こりうる原因が後肢刺激直前の自発活動にあると考え、刺激直前の自発活動の状態と結果的なHit/Missとの関係を調査していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
広視野でマウス大脳皮質の神経活動を記録するには、広域にカルシウムセンサーを均一に発現させることが必須である。また、広域での観察のためには顕微鏡の高速での走査が必要であり、そのために単位面積あたりのレーザーの滞在時間が短くなる。結果的に励起効率が低下してしまうため、短い励起時間でも明るく蛍光を発するセンサーを広く発現させなければならない。このような重要な問題を様々な検討によって既にクリアしている。 さらに、知覚課題のセットアップの立ち上げも完了し、大規模神経活動の記録とそのデータ解析手法の立ち上げもおおよそ完了している。解析結果としてHit時とMiss時の大規模神経細胞群の応答の違いも検出できているため、あとはその違いを生じさせる原因が自発活動時の状態にあるという仮説のもと、その検証に充てていく予定である。研究計画は順調に進んでおり、令和3年度は解析結果が集まってきた時点でまとめを始めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの成果としては、広視野顕微鏡を用いた知覚課題中の神経活動の大規模記録の手法が整ったこと、さらにはそのデータの解析手法の構築がおおよそ完了したことである。これを受けて、今後はデータを取得しつつも解析を重点的に進め、本研究計画の目的に相当する自発活動の知覚への影響の部分に関するデータ取得と解析、そのまとめ上げを進めていく。近年大規模な神経活動の記録と解析を行った論文が報告されるようになってきているため、そのトレンドも押さえつつ、本研究におけるデータに適用できる場合は積極的に適用し、解析を集中して進めていく。結果をチームリーダーと議論した上でまとめるための戦略を練り、追加実験も進めながら論文としてまとめ上げられるよう進めていくことを最終年度の目標とする。
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Causes of Carryover |
研究計画は概ね良好に進んでいるが、コロナの影響で物品の納期や業者とのやり取り等が不安定であった。そのため、実験によるデータ取得より解析手法の確立に重きを置いて研究を遂行した。結果的に今年度の使用研究費が想定より少なくなったが、全体としての研究計画が変更になる訳ではないので、最終的な使用研究費は予定通りとなる見込みである。
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