2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K23790
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
水藤 拓人 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, NIPSリサーチフェロー (80847723)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 温度受容 / ショウジョウバエ / 脂質 / 感覚神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では感覚神経細胞での脂質制御を介した感覚受容の分子機構の解明を目指し、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)において、温度や機械刺激を受容する感覚神経細胞を対象とした網羅的な遺伝子発現解析と脂質制御遺伝子の感覚応答に与える影響を解析した。 本年度は、表皮感覚神経のトランスクリプトーム解析および候補遺伝子の機能的スクリーニングを実施した。温度刺激や機械刺激などの物理刺激の受容体を発現する4種類のclassIII およびclass IV樹状感覚神経のRNAseqから脂質制御遺伝子の発現を解析した。その結果、脂肪酸生合成、ジアシルグリセロール合成、リン脂質合成、脂質輸送などの脂質代謝に関与する遺伝子群の発現が全身の平均的な発現量と比較して高いことを見出した。さらに、これらの遺伝子の中から発現変動が顕著に大きい約50遺伝子を標的にして、GAL4-UASシステムを用いたRNAiによる感覚神経特異的な遺伝子の体温調節行動に対する発現抑制スクリーニングを実施した。その結果これまでに、遺伝子発現抑制によってショウジョウバエ3齢幼虫個体の選好温度を変化させる数種類の遺伝子を明らかにした。 本研究成果から、多様な脂質制御遺伝子が感覚神経において特異的に機能している可能性を見出し、網羅的な遺伝子のスクリーニングからこれまでに明らかにされてこなかった新規の細胞膜分子の制御を介した感覚受容制御の存在が明らかとなった。今後は温度受容だけでなく他の物理刺激受容との関連性やその分子基盤を明らかにし、新たな感覚受容の分子機構の解明を目指す。
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