2019 Fiscal Year Research-status Report
非定型的活性型EphA2による上皮間葉転換およびがん幹細胞化の制御機構
Project/Area Number |
19K23795
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
周 越 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (10733339)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | EphA2 / 上皮間葉転換 / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は細胞の樹立とがん幹細胞性への非定型的活性型EphA2の寄与、また派生的な研究として非定型的活性型EphA2を介した間葉系細胞の遊走制御機構について検討した。 CRISPR/Cas9システムを用いて、非定型的活性化を担うSer-897をAlaに置換したA549肺がん細胞株の樹立を試みたが、2アレルともにノックインが成功した細胞株は樹立できなかった。そこで、EphA2ノックアウト細胞を樹立し、そこへ野生型もしくはSer-897をAlaに置換した変異型EphA2を発現するプラスミドDNAを細胞に導入することで実験に必要な細胞を得ることにした。EphA2ノックアウト細胞は樹立でき、現在、野生型と変異型のEphA2を安定発現した細胞の樹立を行っている。 間葉系の性質を有する乳がん細胞株MDA-MB-231を用いて、がん幹細胞性への非定型的活性型EphA2の寄与を検討した。MDA-MB-231を3次元培養するとスフェロイドを形成した。EphA2をノックアウトすると、スフェロイドの形成能は著しく抑制された。また、EphA2の非定型的活性化を誘導するRSKの活性を阻害してもスフェロイド形成は抑制された。したがって、非定型的活性型EphA2は間葉系細胞のがん幹細胞性維持に関わることがわかった。 上皮性細胞と比較して間葉系細胞では細胞遊走が亢進しており、非定型的活性型EphA2がその制御を担うことを示した。非定型的活性型EphA2は間葉系細胞の運動方向の先端に位置するラメリポディアに過剰発現するが、その局在制御機構を検討した。EphA2は細胞膜上からエンドサイトーシスによって細胞内に移動し、その後細胞膜上にリサイクルされる。そこで、細胞膜上に局在する非定型的活性型EphA2がエンドサイトーシス/リサイクルによってラメリポディアに運ばれることが細胞の遊走能制御に重要であると考え、これを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非定型的活性型EphA2ががん幹細胞性に維持に重要であることを示すことができた。また、派生的なテーマとして、間葉系細胞の遊走能制御における非定型的活性型EphA2の寄与を明らかにすることができた。ノックイン細胞の樹立は困難を極めたが、手法を変更することにより実験目的に合致した細胞株の樹立が可能となった。以上のことより、全体計画は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、樹立した細胞株を用いて、上皮間葉転換や薬剤耐性における非定型的活性型EphA2の寄与を明らかにし、その詳細な分子機構について検討する。
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