2019 Fiscal Year Research-status Report
記憶学習のメカニズム解析及び血漿中脳由来エクソソームを利用した記憶学習能力の評価
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19K23797
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石本 尚大 金沢大学, 薬学系, 助教 (00843062)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 記憶学習 / 脳部位特異的遺伝子発現制御 / 脳由来エクソソーム / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、未知のメカニズムにより記憶学習能力を向上する食物由来の抗酸化アミノ酸ergothioneine (ERGO)の作用機序の解明と、記憶学習能力と相関する血漿中バイオマーカーの探索である。まず、ERGOの作用機序の解明のため、ERGOを経口投与したマウス及び対照群の記憶を司る海馬歯状回(DG)においてプロテオミクス解析を行ったところ、発現が変動する蛋白質を多数見出した。特に発現が増加したある候補蛋白質に着目し、その発現を抑制するアデノ随伴ウイルス(AAV)を構築した。このAAVの感染により、神経細胞のモデル細胞Neuro2Aにおいて発現が抑制されることを確認した。また、in vivoにおいても、DGの神経細胞にAAVが感染することを確かめた。今後、DGにおける候補蛋白質の発現抑制による記憶学習能力への影響を新奇物体認知試験や空間認知試験、Y-maze等の行動試験や脳切片の免疫組織化学的解析により評価する。さらに、記憶学習能力と相関する血清中バイオマーカーの探索のため、脳内の環境を反映する脳由来エクソソームの単離に取り組んだ。超遠心法により得られた画分を、ナノ粒子マルチアナライザーqNanoにより測定したところ、エクソソームの平均粒子径と粒子数は既報と同等であった。さらに、Western blotによりエクソソームマーカーCD63及び脳由来細胞外小胞マーカーSNAP25の発現が確認され、脳由来エクソソームの単離を確認した。今後、マウスの記憶学習能力と相関する脳由来エクソソーム中の蛋白質を探索する。並行してヒトでも解析を進めており、ERGOを経口服用した軽度認知症患者及び健常人の血清から得られたエクソソームにおける候補蛋白質の量、ERGO濃度と認知機能の相関を分析したところ、ある蛋白質の発現が血中ERGO濃度及び認知機能と相関することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ERGOの経口投与によりDGにおいて発現変動する蛋白質をプロテオミクス解析により見出した。ある候補蛋白質の発現を抑制するAAVを構築し、マウスのDG特異的に感染させる系を確立した。さらには、マウス及びヒトの血清成分から脳由来エクソソームを単離する方法を確立し、ヒトの認知機能と血中ERGO濃度と相関する血清中エクソソームに発現する蛋白質を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
記憶学習を司るDGに構築したAAVをインジェクションし候補蛋白質の発現抑制を行い、マウスの記憶学習能力への影響を新奇物体認知試験や空間認知試験、Y-maze等の行動試験や脳切片の免疫組織化学的解析により評価する。また、ヒトとマウスにおいて認知機能と相関する脳由来エクソソーム中の蛋白質の探索を行う。さらには、マウス及び細胞実験により、候補蛋白質の記憶学習能力への関与の詳細な分子メカニズムの解明に取り組む。
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