2019 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of suppressors of atherosclerotic coronary artery disease by using a novel method for measurement of phospholipids
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19K23799
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
辻 徳治 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (50845112)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | リン脂質 / リポタンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
高密度リポタンパク(HDL)は、血管内皮マクロファージから余剰のコレステロールを引き抜くことで動脈硬化プラークの形成を抑制している。心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化性冠動脈疾患は、日本人の死因の約16%を占める疾患であり、その主なリスク因子として、低密度リポタンパク (LDL)中やHDL中に含まれるコレステロール量 (LDL-C、HDL-C)があげられる。近年、スタチン系薬物によってLDL-Cを低下させることで、動脈硬化性冠動脈疾患の発症を抑制できるようになっている。一方で、HDL-Cを大幅に増加させても、動脈硬化性冠動脈疾患の発症リスクに大きな変化は認められず、HDLを介して動脈硬化性冠動脈疾患の発症を抑制するためには、HDLの量よりも、HDLがコレステロールを引き抜く能力が重要になるのではないかと予想されている。本研究では、HDLの主要な膜構成成分であるリン脂質に着目し、ヒト血漿HDL膜中に存在するリン脂質クラスの量や割合の違いがHDLのコレステロール引き抜き能にどのような影響を与えているのかを明らかにする。 我々はこれまでに、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、そして、スフィンゴミエリンといった7種類のヒト主要リン脂質クラスに対する酵素蛍光定量法を開発してきた。本年度は、まず、これらの定量法が、ヒト血漿リポタンパクを測定試料にした臨床研究に応用できるかを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健常者の血漿から超遠心分離によって分離したヒト血漿HDLを測定試料とした場合に、これまでに確立した各種リン脂質クラス酵素蛍光定量法の酵素反応が阻害されないかを検証した。 希釈直線性試験ならびに添加回収試験を行った結果、ホスファチジルコリン、およびスフィンゴミエリン酵素蛍光定量法においては、希釈直線性試験、添加回収試験に加え、同時再現性試験、日差再現性試験においても良好な結果が得られ、定量法の妥当性を確認することができた。一方で、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロールの5種類のリン脂質酵素蛍光定量法においては、良好な結果を得ることができず、各リン脂質酵素蛍光定量法の酵素反応が十分に進行していない可能性や、測定試料中に何らかの反応阻害物質が存在する可能性が考えられた。今後、HDL膜中に含まれる全てのリン脂質クラスを網羅的に定量分析していくためにも、酵素反応の阻害が示唆された5種類のリン脂質酵素蛍光定量法に改良を加える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
酵素反応の阻害が示唆されたホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸および、ホスファチジルグリセロール酵素蛍光定量法において、反応温度や反応時間、熱処理の有無などを再検討し、酵素反応が十分に進行する酵素反応条件を精査する。これにより、ヒト血漿リポタンパクを測定試料とした、全ヒト主要リン脂質定量分析法の確立を目指す。確立したリン脂質定量法から順次、血漿HDLを測定試料としたリン脂質定量分析に応用し、HDL膜を構成するリン脂質の網羅的な定量分析を実施する。健常者と動脈硬化性冠動脈疾患既往歴をもつ患者との間で、HDLリン脂質組成を比較することで、HDLのコレステロール引き抜き能に影響を与える可能性のあるリン脂質を探索する。また、各種定量法を確立する過程において、HDLのみならず、LDLや超低密度リポタンパク (VLDL)を構成するリン脂質にも着目し、各リポタンパク中に含まれるリン脂質量に何らかの違いが認められるかを網羅的に解析することも計画している。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた研究を次年度の持ち越すことになったため次年度使用額が生じた。次年度は、研究の進捗に合わせて、必要な物品・試薬を本助成金から順次購入していく。
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