2019 Fiscal Year Research-status Report
梗塞後心不全発症の分子メカニズムの解明と新規心不全治療標的の提唱
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19K23800
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 浩太朗 大阪大学, 国際共創大学院学位プログラム推進機構, 特任助教(常勤) (90849879)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 心筋梗塞 / 心不全 / ミエロイド細胞 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会を迎えた我が国では、心不全パンデミックと称されるように、心不全患者が急増している。現在の治療を以てしても、心不全は予後不良の病態であり、新規心不全発症予防法の確立が喫緊の課題である。心筋梗塞後の心不全発症過程(心筋リモデリング)には、ミエロイド細胞をはじめとした多くの免疫炎症細胞が関与することが報告されている。炎症関連免疫細胞には多様なサブタイプが存在することが知られているが、分子レベルでのキャラクタリゼーションは未だ不十分である。そこで、心不全病態機構の解明を目的に、新たな炎症関連免疫細胞(特にミエロイド細胞)を探索し、その機能を追究することとした。これまで心筋梗塞モデルマウスの心臓よりミエロイド細胞を単離し、シングルセルRNA-seq解析を行った。その結果、ミエロイド細胞はその発現分子の特徴から3つに分離されることが明らかとなった。そのうち一つはマクロファージ様、もう一つは好中球様の特徴を有していたが、残る一つは既報から特徴づけられる細胞群ではなかった。更なる詳細な検討から、この細胞群はTGF-β3やGlycoprotein A Repetitions Predominant (GARP)を強発現することが明らかとなった。しかしながら、これら分子の心筋リモデリングにおける役割は不明である。そこで、まずこれら分子の心筋リモデリングにおける機能を検討した。心筋梗塞モデルマウスを作製し、抗TGF-β3抗体を投与したところ、心機能の改善効果や心筋線維化の抑制が認められた。 今後はミエロイド細胞特異的TGF-β3やGARP欠損マウスを作製し、更なる機能解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、心筋梗塞後心臓に浸潤するミエロイド細胞を用いてシングルセル解析を行い、心筋リモデリングを制御する可能性のある新たな細胞群を見出した。さらに、これら細胞群に強発現する分子TGF-β3やGlycoprotein A Repetitions Predominant (GARP)に着目した。特に抗TGF-β3抗体の投与により心筋リモデリングの増悪が抑制されることを明らかにし、TGF-β3が心筋リモデリングの増悪に関与する知見を見出しつつある。ミエロイド細胞特異的なTGF-β3欠損マウスの作製には着手しているが、新型コロナウイルスの影響で進捗の見通しが不透明な部分がある。一方、ミエロイド細胞特異的GARP欠損マウスは作製を開始できており、今後の研究の進展が期待できる。以上より、本研究は概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
心筋梗塞モデルマウスに抗TGF-β3抗体を投与することで、心筋リモデリングにおけるTGF-β3の役割をさらに詳細に解析する。またミエロイド細胞特異的GARP欠損マウスを準備し、心筋梗塞後心筋リモデリングにおけるGARPの役割に関する検討に着手する。さらにミエロイド細胞特異的TGF-β3欠損マウスの作製も推し進める。本研究成果によって、新たな心筋リモデリング制御免疫細胞が同定でき、その細胞群を標的とした心不全発症予防法を確立できる可能性がある。
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