2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23803
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
今吉 亜由美 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (20786462)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 蛍光色素 / 有機化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は蛍光色素の開発研究の途中で、ある蛍光色素の pH 応答性を精査した際に光酸の現象に遭遇した。光酸とは、光で容易に励起可能な部位と酸性度の高いプロトンを持つ化合物に光を照射した際、基底状態と励起状態のそれぞれでプロトンの解離が起こり、基底状態と励起状態でpKaが異なる現象のことである。光酸の現象は原理としては知られていたが、これまで実際に有機反応に利用した例はほとんどなかった。 本研究では、蛍光色素を光酸として用い、実際に有機反応に利用する事を目的とする。これまでのところ、分子内に光酸部位と反応点を有した基質を設計し、本化合物に光を照射した結果、光酸反応と考えられる反応が進行する事を見出した。さらに、本反応における置換基効果を調べたところ、反応速度定数と置換基定数の関係性は通常の相関関係にはあてはまらず、当初予想していた関係性とは全く異なる分散性を示した。今後、本反応で得られた知見をもとに、光酸として有用な蛍光色素の開発を行い、反応の一般性を確立したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子内に光酸部位と反応点を有した基質を設計し、光の照射のON, OFFを切り替えて反応を追跡したところ、光照射時のみに所望の反応が進行し、光酸反応と考えられる反応を見出す事ができた。さらに、様々な置換基を導入した基質を合成し、本反応における置換基効果を調べたところ、反応速度定数と置換基定数の間に当初予想していなかった興味深い関係性を見出した。一方、光照射はラジカルの生成なども誘起するため、行っている反応がラジカル反応ではなく光酸反応である事を確認する必要があった。完全にラジカル反応ではないと証明する事は難しかったが、多面的に光酸反応である事を検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出した反応をもとに、光酸反応のバリエーションを広げる。まずは分子内反応を中心に光酸反応を検討し、光酸反応の基盤を確立する事を目指す。特に、有用な光酸部位の設計が反応開発の鍵となると考えられるため、様々な蛍光色素を開発して光酸への適用を試み、光酸部位の最適化を図る。また、いずれの反応においても、反応が光酸反応以外の反応 (ラジカル反応など) で進行するのではなく、光酸反応で進行する事を見極める事が必要となる。そのため様々な観点から光酸反応か否かを検証する。光酸反応の一般性を確立し、分子間反応への展開も目指す。
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Causes of Carryover |
本研究遂行の途中に、重症妊娠悪阻で3ヶ月程度の入院と療養を余儀なくされた。その間、研究を行えなかったため、次年度使用額が生じた。また、妊娠中に行える研究を優先するため、当初に計画していた購入物品から若干の変更が生じ、使用額が変更された。現在は研究活動を中断しているが、来年度研究活動を再開した際に、次年度使用額分を当初から購入を予定していた消耗品 (主に有機反応を行うために必要な試薬等) の購入に使用させて頂く予定である。
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