2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K23839
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
神谷 麻理 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (20844377)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 炎症性筋疾患 / 筋傷害 / 細胞死 / DAMPs |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度内に、多発性筋炎(PM)の筋組織と、PMのマウスモデル(CIM)やPMのin vitroモデルを用いて筋細胞の細胞死(PCD)様式を特定した。さらに、CIMに対しそのPCDの特異的阻害薬を投与することで、筋力や組織学的筋炎が改善したことを示している。 2020年度は、PCD阻害がCIMを改善させた機序を解明することを新たな目標に設定した。まず、PCD阻害薬がin vitroモデルやCIMに及ぼす影響を検証したところ、PCD阻害薬はin vitroモデル培養上清中や、CIM血清中の炎症介在因子の濃度を低下させた。このうちdamage associated molecular patternsに(DAMPs)に分類される炎症介在因子の濃度は、未処置のマウスと比較してCIMマウス血清中にて顕著に上昇し、PCD阻害剤の投与にて未処置マウスと同程度まで低下した。さらに本分子はPM組織中の壊死筋線維において発現が亢進し、CIM筋組織においても同様の所見が確認された。 DAMPsは単球系細胞にinnate adjuvantとして作用し、サイトカイン産生や、抗原提示能を促進させることが知られることから、本分子がPMの病態生理に関与しているのではないかと考え、次にその阻害がCIMに及ぼす影響を検証した。本分子の阻害抗体の投与にてCIMの筋力低下が抑制され、筋組織における炎症所見の改善が認められた。 以上より、筋のPCDに伴う炎症介在因子放出が、PMにおける炎症促進に寄与していることが解明された。 筋細胞の細胞死やそれに引き続いて放出される炎症介在因子を標的とした治療法は、炎症細胞を標的とした既存の治療法とは全く異なる作用機序を介するものであり、臨床応用できれば既存治療で効果不十分な症例への有効性や感染症リスクを伴わない治療として期待される。
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