2019 Fiscal Year Research-status Report
百日咳菌が自然環境下で生存する可能性を探る:アメーバとの共存機構の解析
Project/Area Number |
19K23845
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西田 隆司 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20845200)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 百日咳菌 / アメーバ / 共培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは基礎実験によって、純培養では増殖が見られない貧栄養下においても、アメーバとの共培養によって百日咳菌が増殖することを見出した。百日咳菌の増殖機構を解明するため、本年度は百日咳菌が増殖するための培養条件探索、および近縁菌である気管支敗血症菌と百日咳菌について、アメーバとの共存様式をそれぞれ観察し、比較解析を行った。 アメーバ抽出物を用いた培養、アメーバとの非接触下での培養等を行い、百日咳菌の増殖能を比較したところ、百日咳菌はアメーバ非存在下においても、アメーバの培養上清中で増殖することが確認された。このことは百日咳の増殖にはアメーバとの直接的な作用は必要なく、アメーバ由来の何らかの因子が百日咳菌の増殖を補助することを示している。 またGFPをレポーターとして気管支敗血症菌および百日咳菌に導入し、アメーバとの共培養下における動態を比較解析したところ、気管支敗血症菌がアメーバ細胞内に集積することが確認された。一方で、百日咳菌においては、アメーバ細胞内での集積は観察されなかった。このことから気管支敗血症菌はアメーバによる捕食・消化に対して抵抗し、アメーバ内に集積あるいは増殖するが、百日咳菌はアメーバ細胞内で増殖することはなく、アメーバ細胞外を増殖の場としていることが示唆された。 アメーバは自然環境中に広く存在するため、これらの知見は百日咳菌が環境中でも生存し増殖する可能性を示唆するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、百日咳菌がアメーバとの共培養により増殖するための条件探索を行い、類縁菌である気管支敗血症菌の増殖機構と異なり、何らかのアメーバ由来の因子依存的に細胞外で増殖することが確認出来た。因子の同定や増殖に必要な菌の遺伝子等についてはまだ明らかとなっていないが、次年度にこれらの解析を進めるための重要な基礎的知見の取得に至ったと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は百日咳菌の増殖にはアメーバ由来の細胞外因子が必要であることが分かった。そのため次年度は当初の計画通り、各種クロマトグラフィー、質量分析等を利用し、因子の同定を試みる。また気管支敗血症菌と百日咳菌では共培養時の菌動態に大きな違いが見られたため、より詳細な動態の観察、関与遺伝子の同定等を行うことにより、この差異が生じる機構についても解明を進めていく。
|
Causes of Carryover |
(理由)計画当初は百日咳菌が気管支敗血症菌と同様にアメーバの消化機構を回避していると予想していたが、予想に反してその動態は大きく異なり、確認実験と解析に時間を要した。そのため、百日咳菌の増殖に必要な因子を同定するための、多額の費用が必要となる質量分析等を行うに至らず、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は百日咳菌の増殖に必要なアメーバ由来因子を同定するために、クロマトグラフィーや質量分析による解析を進め、残額と併せた予算を消費する予定である。
|