2020 Fiscal Year Annual Research Report
コレラ菌が形成するIV型線毛を介した腸管定着機構の解明
Project/Area Number |
19K23866
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
沖 大也 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (30845285)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | コレラ菌 / IV型線毛 / マイナーピリン |
Outline of Annual Research Achievements |
コレラ菌(Vibrio cholerae)をはじめとする腸管系病原性細菌の多くは、汚染された食物や水を介して消化管内に侵入すると、線毛と呼ばれる繊維状の構造物を菌体表面上に形成し、標的細胞への付着と定着を達成する。その後、コレラ毒素などの外毒素を菌体外に産生し、下痢症に代表される病原性を発現する。この付着・定着過程はヒトへの感染を成立させるための最も重要なステップであり、定着が成立しなければ病原性を発現することはできない。そのため、付着・定着を阻害することができれば、コレラ菌を殺さず静菌的に体外に排除することで、耐性菌の出現抑制ができると予想されており、有望な創薬標的であると考えられているが、その詳細な分子機構は不明である。本研究では、コレラ菌が産生し、定着過程に重要であると予想されるIV型線毛と分泌タンパク質の物理化学的解析および生化学的解析を行い、最終的に抗生物質に替わる新規の感染阻害剤の開発を目指している。 本年度は、昨年度に見出したコレラ菌のIV型線毛の先端部に位置する線毛構成タンパク質(マイナーピリン)の結晶化条件をさらに最適化し、より高分解能の構造情報を得ることを試みた。得られた結晶を大型放射光施設SPring-8において回折測定を実施した結果、最高分解能2.3Åで構造決定した。さらに得られた構造をもとに、コレラ菌のIV型線毛全体のモデル構造の構築をおこなった。このモデル構造において、今回決定したマイナーピリンは線毛の先端部をキャップするように位置しており、線毛の安定化と形成開始に関与していると予想される。
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