2019 Fiscal Year Research-status Report
感染記憶として働く小分子RNAを介したウイルス防御機構の解明
Project/Area Number |
19K23874
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小出 りえ 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (40846325)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 内在性RNAウイルス / ボルナウイルス / 感染防御 / 小分子RNA / piRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のゲノムにはウイルス由来の配列が多数存在している。内在性ボルナウイルス様ヌクレオプロテイン(Endogenous bornavirus-like nucleoprotein; EBLN)は、RNAウイルスの一種であるボルナウイルス(BoDV)に由来する遺伝子配列である。これまでの研究より、げっ歯類と霊長類においてそれぞれ独立に獲得されたEBLNが、外来性ボルナウイルスのmRNAに対してアンチセンス鎖のPIWI-interacting RNA (piRNA)を産生することが知られている。piRNAは、Piwiタンパク質と結合し、トランスポゾンなどの標的RNAを配列特異的に制御する小分子RNAである。この機能から、EBLN由来のpiRNAがRNA干渉によって外来性BoDVの感染を抑制する可能性を着想した。
本研究課題では、EBLN由来のpiRNAが配列特異的に外来性のBoDV感染を抑制する可能性を、遺伝子改変マウスモデルを用いたBoDVの感染実験により検証することを目的としている。本年度は、マウスゲノムからpiRNAを産生する3つのEBLNを全てノックアウトしたEBLNノックアウトマウスを樹立した。また、BoDVマウス脳馴化株およびGFP組み換えBoDVの二つのウイルスを用いた感染実験系を確立し、ウイルスmRNAおよびタンパク質検出のための最適化を行なった。さらに、マウスの脳や他の組織におけるPiwi遺伝子の発現解析を行い、RNAスライサー活性を持つMiliの転写産物が、視床下部や小脳など、脳の特定の領域で発現していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、piRNAを産生する3つのEBLNをノックアウトしたEBLNノックアウトマウスを樹立し、BoDVの感染実験系の確立に尽力した。またCRISPR/Cas9システムを用いてマウスゲノムのpiRNA産生領域(piRNAクラスター)に現存のBoDVヌクレオプロテイン配列を挿入したEBNノックインマウスの作製も試みた。しかし、オフターゲット効果により目的のマウスを得られなかったため、次年度に再試を行う予定である。EBNノックインのターゲットとなるpiRNAクラスターはすでに同定している。
またマウスの脳や他の組織において、Miliの転写産物および5'側のエキソンを欠損したMili遺伝子からのmRNAが脳の様々な領域で発現していることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、CRISPR/Cas9システムを用いてマウスゲノムのpiRNAクラスターに現存のBoDVのヌクレオプロテイン配列を挿入したEBNノックインマウスの作製を再度試みる。本年度に確立した感染実験系を用いて、EBLNノックアウト/EBNノックインマウスおよび野生型マウスにおけるボルナウイルス感染に対する感受性の違いを調べる。またこれらのマウスからPiwiタンパク質を免疫沈降し、結合したpiRNAをRNA-seqによって解析する。得られたリードはリファレンスゲノムにマッピングし、EBLN/EBN由来の一次piRNAおよびBoDV由来の二次piRNAの有無を確認する。
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Causes of Carryover |
次年度に再試予定であるCRISPR/Cas9システムを用いたノックインマウス作製、RNA-seqを用いた解析を予定しているため、40万円を繰り越し、2年目の実験に備えることとした。
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