2019 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルス反応性メモリーB細胞の制御機構の解明
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19K23875
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
森山 彩野 国立感染症研究所, 免疫部, 主任研究官 (60632354)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 自然リンパ球 / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザは未だ世界各地で感染者の多い重大な感染症の一つであり、また最近では新型コロナウイルスの世界的な流行が起きるなど、さまざまな感染症への対策が世界的に求められている。B細胞から産生される抗体は感染防御免疫応答において重要な役割を担う。また活性化したB細胞の一部はメモリーB細胞として長期に渡って体内で維持されて再感染に備えるが、このメモリーB細胞の分化や維持、再活性化の制御機構はいまだ十分に明らかになっていない。メモリーB細胞の誘導はワクチンの有効性に関わる重要な因子であり、感染防御免疫応答において誘導されるメモリーB細胞の制御機構の解明は感染症対策において重要である。2型自然リンパ球はB細胞応答の制御に関わる2型サイトカインの主要産生細胞のひとつであり、メモリーB細胞応答の制御に関わり感染免疫応答を調節する可能性が考えられるが、その役割は不明である。そこで本研究では2型自然リンパ球がメモリーB細胞の分化や維持・再活性化に関与するかどうかを明らかにし、またその制御機構を解明することを目的として研究を行っている。また、インフルエンザウイルス感染系においてメモリーB細胞の分化や維持・再活性化の際に体内には大量の抗インフルエンザIgG抗体が存在している。IgG抗体は定常領域を介して免疫細胞表面に発現したFc受容体と結合し免疫細胞の機能を制御することが知られているが、自然リンパ球に与える影響は不明である。そこで、今年度は2型自然リンパ球がメモリーB細胞の分化や維持・再活性化に関与するかどうかを明らかにするためにまず2型自然リンパ球をマウス体内から除去する条件の検討を行った。さらに、マウス体内に抗インフルエンザIgG抗体が存在しているときの自然リンパ球の挙動を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2型自然リンパ球がThy1を発現していることを利用し、Thy1.2を持つCD3欠損マウスにThy1.1発現T細胞を移植し、Thy1.2抗体を投与してT細胞はそのままに2型自然リンパ球のみをマウス体内から除去することを計画している。本年度はThy1.1発現T細胞の移植条件とThy1.2抗体の投与量を検討した。検討された条件を組み合わせて、インフルエンザウイルス感染系においてマウス体内から2型自然リンパ球のみを除去する予定である。 また、インフルエンザウイルス感染後、体内には大量の抗インフルエンザIgG抗体が存在している。このIgG抗体が免疫反応中に自然リンパ球に与える影響は不明である。そこでマウスへ抗インフルエンザIgG抗体を投与し、インフルエンザウイルスに経鼻感染させて肺に含まれる自然リンパ球を解析した。インフルエンザウイルス感染によって自然リンパ球が増加することが以前報告されているが、興味深いことに、抗体投与群において自然リンパ球の一部が顕著に増加していた。さらに、フローサイトメトリー解析によって、この自然リンパ球はIgG抗体の定常領域に結合するFc受容体を発現していることが明らかになった。これらの結果から、自然リンパ球の一部の誘導もしくは増殖が免疫応答中に産生されたIgG抗体によってFc受容体を介して制御されることが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き2型自然リンパ球がメモリーB細胞の分化や維持・再活性化に関与するかどうかを明らかにするために研究を続ける予定である。2019年度の研究内容を踏まえて、細胞移植と抗体投与を組み合わせることで任意の時期にマウス体内から2型自然リンパ球を除去し、インフルエンザウイルス抗原に対するメモリーB細胞応答の変化を解析して自然リンパ球によるB細胞記憶応答の制御を明らかにしていく。 また、2019年度の研究から、B細胞から産生される抗体によって一部の自然リンパ球の挙動が制御される可能性が示された。これについて、Thy1抗体投与による自然リンパ球除去実験を応用し、インフルエンザウイルス抗原に対する免疫応答において、抗インフルエンザ抗体投与により増えた自然リンパ球がどのような働きを持つのかを明らかにしていきたい。さらに、この抗体による自然リンパ球の制御が自然リンパ球表面に発現しているFc受容体によるものであるかどうかをFc受容体欠損マウスやFc受容体との結合能を持たない変異型抗体を用いて解析していく予定である。これらの研究を通じて、B細胞応答と自然リンパ球応答の相互作用をさらに明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
2019年度分についてはほぼ使用済みであるが、年度末納品等にかかる支払が2020年4月以降となったため次年度使用学が生じた。当該支出分については次年度実支出額に計上予定である。
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