2019 Fiscal Year Research-status Report
メトホルミンと抗PD-1抗体併用による腫瘍微小環境の代謝改変メカニズムの解明
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19K23887
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西田 充香子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60844644)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | メトホルミン / 代謝改変 / 腫瘍微小環境 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はメトホルミンと抗PD-1抗体併用による腫瘍退縮の実験系を用いて、腫瘍浸潤CD8T細胞(CD8 TILs)、腫瘍細胞の同時解析によって腫瘍微小環境の代謝を制御する因子を活性酸素(ROS)の関与も含め、明らかにすることを目的としている。予備実験からメトホルミンの誘導する抗腫瘍効果にROSを起点としたNrf2-mTORC1 経路の活性化がCD8TILsにおいて起こることが重要であることが分かってきた。 さらにメトホルミンはCD8TILsの解糖系を亢進し、サイトカイン産生を増加させるが、抗酸化剤処置によってこれらの現象が消失するという知見も得ている。 従い、今年度は解糖系とROS-Nrf2-mTORC1経路がどのような分子機構で連動するのかを明らかにするべく、2-DG(解糖系阻害剤)処置時のCD8TILs におけるNrf2、mTORC1 関連分子(Nrf2,HO-1,p-S6,Ki67)の発現をFACS にて解析した。その結果、解糖系阻害によってNrf2、mTORC1 関連分子の発現が低下した。その一方でNrf2 およびmTORC1 阻害剤は解糖系関連分子(Glut-1)の発現、サイトカインの産生能に影響は与えなかった。これらの事実からメトホルミンによるCD8TILsにおけるNrf2-mTORC1 経路の活性化にはROSを起点とした解糖系の亢進が必要であるが、Nrf2-mTORC1経路の活性化は細胞の機能維持よりもむしろ細胞増殖の維持に寄与している可能性が示唆された。腫瘍細胞でも同様の検討を行ったが、メトホルミンおよび併用治療は腫瘍細胞におけるNrf2-mTORC1経路には何ら影響を与えていなかった。しかし、腫瘍細胞では解糖系の低下が認められ、免疫不全マウスでは消失したことから、メトホルミンが誘導する腫瘍細胞の代謝改変には免疫細胞の関与が必須であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、解糖系、Nrf2そしてmTORC1阻害剤処置時のCD8 TILsと腫瘍細胞のFACS 解析は完了した。 また、次年度に使用予定のNrf2 flox マウスは作成済みで、現在は活性化されたCD8T細胞のみでNrf2 が欠損するコンディショナル KO を作成するためグランザイムCre マウスとの交配を行い、実験に必要な匹数を確保できるように準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はNrf2、mTORC1阻害剤を用いて、CD8 TILs におけるNrf2-mTORC1 経路の重要性を証明してきたが、より確固たる形で証明するべく、活性化CD8T 細胞特異的にNrf2 分子を欠損させることの出来るNrf2 コンディショナルKO マウスを用いて腫瘍移植実験ならびにCD8TILs、腫瘍細胞における解糖系-Nrf2-mTORC1 経路関連分子の発現解析を行い、Nrf2阻害剤実験と同様の結果が得られるか検討を行う。さらにメトホルミンによるCD8TILs と腫瘍細胞の逆方向性の代謝改変メカニズムの解明に関しては、まず、代謝改変に重要な因子を同定するため、治療時の腫瘍塊からCD8 TILs、腫瘍細胞をソーティングにより回収し、RNAシークエンスによる遺伝子発現解析を行う。因子同定後は因子の阻害剤を処置し、CD8 TILs、腫瘍細胞における解糖系-Nrf2-mTORC1 経路関連分子の発現解析を行い、その関与を証明する。 さらに腫瘍切片を用いたin situ 代謝解析法によって代謝関連分子をイメージング化し、治療によって腫瘍微小環境の代謝産物に変動が生じるかに関しても併せて検討を行う。
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