2019 Fiscal Year Research-status Report
CAR-T細胞の「疲弊」改善に寄与する共刺激因子発現型腫瘍溶解ウイルスの開発
Project/Area Number |
19K23894
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
吉田 秀樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10643546)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍溶解性アデノウイルス / 横紋筋肉腫 / CAR-T細胞療法 / 免疫学的疲弊 / 共刺激因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】 我々は、代表的な小児がんである横紋筋肉腫(RMS)を克服するべくRMS特異的に殺傷する腫瘍溶解アデノウイルス(OAd)および遺伝子改変キメラ受容体T(CAR-T)細胞を作成した。またin vitroにおいて、共刺激因子を発現した末梢血単核球(PBMC)とRMS特異的CAR-T細胞を共培養すると、CAR-T細胞の免疫学的疲弊が抑制されることを既に明らかにした。上記の背景や研究成果を踏まえ、本研究では、共刺激因子をRMS細胞内で発現させる改変OAdを作成する。そしてこれをRMS細胞株に感染させ、がん細胞を「抗原提示細胞化」させることで、in vivoにおいてもRMS特異的CAR-T細胞の疲弊を抑制し、その結果RMSに対する抗腫瘍効果を増強できることを示す。 【今年度の研究内容】1)共刺激因子発現型RMS特異的OAdの開発(現在進行形である)。① 共刺激因子のクローニングおよび発現型OAdの作成。② 共刺激因子発現型OAdの感染による、RMS細胞上への共刺激因子発現の確認。2)共刺激因子発現型OAdによる、CAR-Tの疲弊抑制効果の検証(併用療法の検証まで到達していない)。 【意義・重要性】「共刺激因子をRMS細胞上に発現させる改変OAdをCAR-Tと併用することが、T細胞に生じる『疲弊』を軽減し、抗腫瘍効果を増強させ得るのか」という問いを明らかにすることを最終目標とする。これらの結果は、固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の治療効果を著しく高める潜在性を秘めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本プロジェクトは下記の理由でやや遅れている。 1)ウイルス実験開始許可。今回作成する遺伝子改変アデノウイルスは、増殖可能なタイプである。そのため「第二種使用等拡散防止措置確認申請書」を文部科学大臣あてに提出し、新規計画に関連して、遺伝子組換え生物等の第二種使用等をする間に執る拡散防止措置の確認を受ける必要があり、これに2019年8月までの期間を要した。また本学の遺伝子組換え実験安全委員会および動物実験委員会に既に実験計画書を提出していたが、文科省とのやり取りを踏まえ、計画書の修正を余儀なくされ、遺伝子組み換えDNA実験および動物実験について最終的に認可が下りたのが2019年11月であった。このようにウイルス作製のスタートラインに立つまでに予想以上の時間を要した。 2)新型コロナウイルスの影響。私以外にも大学院生や技術研究員がこのプロジェクトの遂行を担っている。3月以降から「3密を防ぐため」大学院生が自由に研究室を利用しにくくなり、また科学技術員も勤務時間の制限を強いられている。さらに4月に入ってからは、本学においても全研究活動が止まる一歩手前の段階となり、このままの状況が続くようでは「やや遅れている」を選択せざるを得ない
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルス作製・使用の認可が下りるまでに、ウイルス作製直前のアデノウイルスプラスミドは作成済であり、昨年11月以降、順番に作成し始めている。アデノウイルスに共刺激因子を発現させる前に、既存のレンチウイルスを用いてがん細胞に共刺激因子を発現させ、これによってCAR-T細胞の疲弊を防ぐことを示し、本研究の仮説の補完を行うことも検討している。 昨年度中に、CAR-T細胞の作製法、および評価方法は確立しており、早い段階で研究活動が通常通り再開することができれば、プロジェクトを遂行することは十分可能と考える。
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