2019 Fiscal Year Research-status Report
The association between SORL1 and advanced bladder cancer
Project/Area Number |
19K23899
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
内海 孝信 東邦大学, 医学部, 助教 (80594275)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 膀胱癌 / SORL1 / 遊走能 / ROCK |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は①膀胱癌細胞株を用いてSORL1の機能解析を行い、膀胱癌の進展に関する機序を明らかにすること、②膀胱癌治療におけるSORL1を中心とした分子ネットワーク解析で新規の治療標的分子の探索を行うことを主な目的とした。 2019年度はマウス膀胱癌細胞株B-UPPL3およびB-BPPL4、ヒト膀胱癌細胞株CAL29を用いてSORL1が関与する細胞機能実験とシグナル伝達解析を行った。 CRISPR-Cas9法によりSORL1をknock-outした細胞とempty vectorをtransfectionしたcontrol細胞とを比較して有意に遊走能および浸潤能が上昇することを再現性をもって確認した。遊走能に関しては、wound healing assayでも評価を行い、B-UPPL3やB-UPPL4はCAL29に比べてSORL1のknock-outによる遊走能の上昇の程度が大きいことを確認した。B-UPPL3およびB-UPPL4はp53およびPTEN遺伝子をknock-outしたマウスより樹立された膀胱癌細胞株であるので、SORL1とp53またはPTENの重複した機能不全が遊走能上昇に関連することが推察された。ウェスタンブロット法およびPCR法でB-UPPL3およびB-UPPL4はp53およびPTENが発現していないことを確認した。 ウェスタンブロット法を用いて、SORL1をknock-outした細胞では、細胞遊走に関連する因子の中でROCK1およびROCK2、リン酸化Cofilinの発現が上昇していることを確認した。SORL1をknock-outすることによって、ROCK/LIMK/cofilinシグナル経由でアクチン重合が促進されて遊走能が上昇していると推察された。 本研究におけるSORL1の機能解析とシグナル伝達解析によって、SORL1は膀胱癌において遊走能を抑え込んでいる腫瘍抑制遺伝子である可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SORL1の分子ネットワークを詳細に解析することを目的として、遊走能に関与するROCKの上流であるRhoA/B/CやRac1/2/3、ROCKとCofilinの中間であるLIMKの発現量をウェスタンブロット法で現在確認実験を行っている。また、蛍光顕微鏡でstress fiberやfocal adhesion formationの撮影実験が現在までに行えていない。 また、浸潤能の解析として、SORL1の発現とMMP分泌の関係性をウェスタンブロット法で行えていない。 SORL1と遊走能の関連が判明してはいるが、膀胱癌新規治療法とバイオマーカーの研究として、ROCK阻害剤Y-27632の治療効果判定およびSORL1のネガティブ・バイオマーカーとして可能性の検証ができていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
膀胱癌におけるSORL1の機能解析から、SORL1は主に遊走能や浸潤能を制御している腫瘍抑制遺伝子である可能性が示唆されている。今後は遊走能に関連するROCK/LIMK/cofilinシグナルを中心としたネットワーク解析を詳細に行い、ROCK阻害剤Y-27632の有効性をin vitroで検証する。また、膀胱癌の大幅な遊走能上昇には、SORL1単独ではなくp53またはPTENの重複した機能不全の関与も推察されたので、今後はCAL29に対してsiRNAを用いてp53またはPTENをknck-downして相乗効果の検証を行いたい。 in vitroでのROCK阻害剤Y-27632の有効性が確認された場合には、B-UPPL3およびB-UPPL4のempty vector細胞とSORL1をknock-outした細胞を尾静脈注射したNSGマウスを用いてROCK阻害剤療法の有効性の検証とSORL1と腫瘍微小環境の解析を行う。具体的には、治療下での肺転移数の計測と腫瘍組織をHE染色および免疫染色する。さらに治療中の可溶性SORL1をマウス採血でモニターしてネガティブバイオマーカーとしての可能性を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
購入した抗体で複数回ウェスタンブロット法によるタンパク質発現実験を行い、実験時間をそちらに費やし他の実験が行えなかったため、結果として使用額が想定より低くなった。 今年度は遊走能に関連するROCK/LIMK/cofilinシグナルを中心としたネットワーク解析を詳細に行い、ROCK阻害剤Y-27632の有効性をin vitroで検証する。in vitroでのROCK阻害剤Y-27632の有効性が確認された場合には、B-UPPL3およびB-UPPL4のempty vector細胞とSORL1をknock-outした細胞を尾静脈注射したNSGマウスを用いてROCK阻害剤療法の有効性の検証とSORL1と腫瘍微小環境の解析を行う。
|