2019 Fiscal Year Research-status Report
肉腫における増殖・生存シグナルによる抗腫瘍免疫抑制機構の解明
Project/Area Number |
19K23901
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
礒山 翔 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子薬理部, 研究員 (10843394)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 肉腫 / 抗腫瘍免疫 / 増殖・生存シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは免疫による排除の対象であるが、腫瘍内に積極的に免疫を抑制する環境をつくり上げることで、抗腫瘍免疫から逃避している。上皮性のがんにおいて、増殖・生存シグナルは、がんの増殖だけでなく免疫関連遺伝子の発現制御による免疫抑制性の腫瘍内微小環境の成立に寄与していることが知られている。しかし、骨や脂肪、筋肉に発生する肉腫においては、腫瘍内の微小環境において免疫抑制機構が働いている可能性が示されているものの、その増殖・生存シグナルが腫瘍内の免疫抑制に寄与しているかどうかは不明である。本研究課題では、肉腫の増殖・生存シグナルによる抗腫瘍免疫抑制機構を分子レベルで解明することを目的とする。 肉腫では、サブタイプによって様々な受容体型チロシンキナーゼ(RTK)が活性化し、その増殖・生存に重要な役割を果たしていることが知られている。そこで、まずは多くのRTKシグナルの下流で共通して活性化するPI3Kシグナルについて、免疫関連遺伝子の発現制御による抗腫瘍免疫抑制機構を解明するため、マイクロアレイ解析を行った。その結果、ヒトの骨肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫において、PI3Kシグナルの阻害によって免疫に関連した遺伝子セットが顕著に発現変動していることが明らかとなった。また、興味深いことに、その遺伝子セットの中に抗腫瘍免疫を抑制するある種のケモカインや抗原提示関連分子が含まれていることが分かった。現在、マウス肉腫細胞株を用いて、同様の解析を進め、同系マウスモデルを用いたin vivoにおける検証を進めている。また、PI3K上流のRTKシグナルについても、繊維肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫において活性化が認められ、その阻害剤の開発が進められているPDGFR、VEGFR、IGF1R、EGFRシグナルについて検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肉腫のPI3Kシグナルによる免疫抑制機構について検討したところ、PI3Kシグナルが免疫関連遺伝子の発現を制御していることが確認され、抗腫瘍免疫の抑制に関わることが示唆されるいくつかの候補因子を同定することが出来た。現在、同系マウスモデルを用いた検討に着手している。また、その他の増殖・生存シグナルについても、対象を繊維肉腫や骨肉腫などに絞り検討を進める段階にきており、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
PI3Kシグナルについては、得られた免疫関連遺伝子がin vivoにおいても発現制御されていることを、同系マウスモデルを用いて確認し、実際に抗腫瘍免疫の抑制に寄与しているかどうかを検証していく予定である。具体的には、腫瘍を皮下に移植した同系マウスにPI3K阻害剤を投与し、腫瘍の免疫関連遺伝子の発現量および腫瘍内の各種免疫細胞の割合、抗腫瘍免疫の活性化状態などをDNA マイクロアレイやフローサイトメトリーを用いて検討する。また、その他の増殖・生存シグナルについても検討を進め、それらのシグナルによって発現が制御されている免疫関連遺伝子の同定とそれによる抗腫瘍免疫抑制の検証を行っていく。さらに、抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬との併用による抗腫瘍効果についても検討する。
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