2019 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞技術を用いた固形がんに対する他家移植用CAR-T細胞療法の開発
Project/Area Number |
19K23913
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嘉島 相輝 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (50842952)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | CAR-T細胞療法 / iPS細胞 / 前立腺癌 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん免疫療法の一つであるキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor: CAR)T細胞療法は、特定のがん抗原を認識するCARを、免疫細胞であるT細胞に導入してがんを攻撃させる治療法である。現在、CAR-T細胞療法は一部の血液がんに対して良好な成績を示しているが、現行の治療法では、患者毎に血液を採取して一旦体外でCAR-T細胞を作製し、それを投与するという自家移植のプロセスを経ねばならず、待機時間が必要であるほか、細胞の均質性が保ちづらいという問題点がある。 本研究ではこれらの問題点を克服するために、移植しても拒絶されにくい型のiPS細胞からCAR-T細胞を作製することで即納型CAR-T細胞製剤を開発し、がん患者に広く投与可能な、すなわち他家移植のCAR-T細胞療法の開発を目指している。 本研究では、日本における罹患者数が上位の前立腺癌を対象とし、前立腺癌に高発現する前立腺癌特異的癌抗原(Prostate specific membrane antigen: PSMA)を標的抗原とした。 2019年度には、まず本研究で必要なHLA最頻ハプロタイプホモ型iPS細胞を京都大学iPS細胞研究所から入手した。その後、PSMA特異的CAR遺伝子とレポーター遺伝子を組み込んだレンチウイルスベクターを作製し、HLAホモiPS細胞に遺伝子導入した。現在、そこからレポーター遺伝子を発現するiPS細胞のみを複数株選別してシングルセルクローニングを行うことによって、PSMA-CAR-iPS細胞を樹立した。さらに、次世代シークエンサーを用いた同細胞の全ゲノムシークエンスを行い、癌関連遺伝子配列が野生型であることを確認して安全性の担保を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の準備段階として、HLAホモ型iPS細胞の入手や、PSMA-CAR遺伝子を持つレンチウイルスベクターの入手が必要であったが、これらは滞りなく入手可能であったため、2019年6月頃には準備が完了した。その後およそ3か月の間に、PSMA-CAR遺伝子を持つレンチウイルスベクターにレポーター遺伝子を組み込み、これをHLAホモiPS細胞に遺伝子導入した。さらに、2019年10月頃より、レポーター遺伝子を発現するiPS細胞のみを選別してシングルセルクローニングを行い、年度中にPSMA-CAR-iPS細胞の樹立が可能であった。 現在までの一連の過程は、申請時に予定していた所要期間を大きく逸脱することはなく、おおむね順調に経過しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、CARへの刺激によるiPS細胞由来T細胞の分化の条件検討および抗腫瘍効果の検証を行う予定である。 我々の研究室では、再構成されたTCR遺伝子を持つT-iPS細胞から未熟T細胞を誘導し、TCR刺激により成熟T細胞へと分化誘導する技術をすでに確立済みである。また、非T細胞由来のiPS細胞にTCR遺伝子を外来的に導入したTCR-iPS細胞のT細胞分化にも成功している。 本研究ではこれらの技術を発展させ、CARへの刺激で成熟T細胞へと分化させる条件を検討する。具体的には、異なるプロモーターによって発現するPSMA遺伝子を含むレンチウイルスベクターを作製し、同ウイルスを抗原提示細胞株に感染させ、様々なレベルでPSMAを発現する複数のサブクローンを得る。これらをstimulatorに用いて、T細胞成熟に適した刺激を加えられる条件を検討する。 PSMA-CAR-再生T細胞が作製可能となれば、まずは作製したCAR発現再生T細胞がCAR-T細胞としての抗原特異的細胞傷害活性を保持しているかどうかを、前立腺癌細胞株を用いてin vitroで検討する。その後、in vivoで前立腺癌細胞株および患者腫瘍組織移植(Patient-derived xenografts: PDX)モデルを用いて抗腫瘍効果を検証する。
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