2019 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌におけるPTENの発現とtopoI阻害剤耐性機序の解明
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19K23917
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
財津 瑛子 九州大学, 大学病院, 医員 (50843497)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | Colon cancer / Chemoresistance / PTEN / Topoisomerase Ⅰ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究概要および目的:大腸癌治療に重要な抗癌剤であるイリノテカンに代表されるtopoisomerase I (topoI)阻害薬の耐性機序のひとつとしてtopoIの分解が寄与することが分かっている。またPhosphatase and Tensin Homolog Deleted from Chromosome 10 (PTEN) がDNA-dependent protein kinase (DNA-PKcs)を介し、topoIの分解を抑制しtopoI阻害薬の感受性を高める可能性が示唆されている。本研究の目的はPTENの低発現がtopoI阻害剤耐性をもたらすことの普遍性および重要性を大腸癌細胞株および大腸癌臨床検体を用いて明らかにすることである。
2019年度研究実績:①PTENの発現とtopoI分解についての検討 ヒト乳癌細胞株(MDA231)を用いてPTENをKnock outし、ウェスタンブロットおよび蛍光免疫染色にてtopoIのタンパク量を評価した。PTENの低発現によりtopoIの分解が亢進していることを確認した。さらに蛍光免疫染色にてDNA-PKcsが増加し、topoIの分解産物も増加していることからPTENを介したtopoIの分解を強く示唆された。さらにこの細胞にtopoI阻害剤を投与したところコントロールより耐性が生じていることを確認した。 ②ヒト大腸癌細胞株での検討 ヒト大腸癌細胞株であるHCT15とColo205にtopoI阻害薬を投与したところウェスタンブロットにてHCT-15はより耐性を示すことを確認した。免疫染色にて耐性を示したHCT-15ではtopoIの分解産物がColo205と比較し多いこと、またPTENのタンパク発現が低いことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PTENの発現とtopoIの分解の関係について過去の論文での報告を検証し、再現性があることを確認した。また2種類の大腸癌細胞株の本来のPTENのタンパク発現量の違いによりtopoI阻害薬の耐性の違いが生じていることを確認できた。 さらにPTEN低発現かつ耐性を示す細胞株に対し、PTENを過剰発現させその耐性をの変化を検討する予定であったが、年度内にその実験までには至らなかった。 以上のことより、研究計画に概ね沿った結果を得られていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
① 2019年度検討しなかった大腸癌細胞株についてPTENの発現量とtopoI阻害薬耐性の程度を評価する BT-549、LS411N、C-33 Aなどの大腸癌細胞株を用いることを検討している。2019年同様、TopoI阻害薬のイリノテカンの最終代謝産物SN-38を投与する。タンパクを回収後、topoI抗体を加え免疫沈降法によってTopoIタンパクを分離し、沈降したタンパクを用いユビキチン抗体を一次抗体としたwestern blotにて分解されたTopoIタンパクの有無を調べる。さらにPTENの発現の程度を評価し、topoIの分解との関係を検討する。 ② PTENの過剰発現によるtopoI阻害薬の感受性変化を検討する PTEN低発現大腸癌細胞株にPTENを過剰発現させ、topoI阻害薬の感受性に変化があるか検討する。複数の癌細胞株で再現性をもってPTENの発現強度が抗癌剤耐性に影響するようであれば臨床検体を用いた検討にすすむ。 ③ 臨床検体の免疫染色を用い、PTENの低発現かつtopo-pS10の高発現症例が生存率、治療効果の点で劣ることを検討する 根治的切除をされた抗癌剤未治療の大腸癌臨床検体(100例程度)、抗癌剤治療後に切除された大腸癌臨床検体(50例程度)を用いてPTENおよびtopo-pS10の発現頻度について検討する。この際合わせて同検体の生検標本も評価し、生検標本での判定の有用性、生検前後での発現の違いについて検討する。さらに臨床データ(TopoI阻害剤の投与の有無、投与量、治療効果、副作用の程度、予後など)を調査しPTENの発現とtopoI阻害薬耐性の関係の臨床的意義について追及する。
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