2019 Fiscal Year Research-status Report
内因性TCRおよびMHC発現を抑制した非自己T細胞によるT細胞輸注療法の開発
Project/Area Number |
19K23919
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岡田 怜美 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40849501)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 輸注療法 / 宿主組織傷害 / 拒絶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非自己T細胞を用いたT細胞療法の確立であり、“宿主組織傷害”と“輸注細胞の拒絶”を抑制した細胞の開発である。すなわち、輸注細胞である非自己T細胞の内因性TCRの発現を抑制することで宿主組織傷害を抑制し、さらに、輸注細胞のMHC発現を抑制することで拒絶を抑制することを目的とする。 本研究ではがん精巣抗原であるNY-ESO-1抗原をターゲットとし、ヒトリンパ球にNY-ESO-1特異的TCRを遺伝子導入した。内因性TCRの発現を抑制するsiRNAを搭載させたレトロウイルスベクターを用いることで、同時に内因性TCRの発現を抑制させた。この遺伝子導入細胞のアロ抗原に対する反応性をチミジン取り込み法にて解析し、アロ抗原に対する反応性が著明に低下していることを証明した。これにより、宿主組織傷害を抑制できる可能性が示唆された。 次に、MHC classⅠ分子の発現の抑制はβ2ミクログロブリンをターゲットとし、レンチウイルスベクターを用いたCRISPR/Cas9システムにより行った。このレンチウイルスベクターをヒトリンパ球に導入し、フローサイトメトリー解析を行い、約15%のMHC発現の抑制が確認できた。この遺伝子導入細胞をビーズ分離法にてセレクションを行い、99%とより高純度のMHC抑制細胞を作製した。このMHC抑制細胞をターゲットとしアロ細胞と共培養を行い、混合リンパ球試験を行うと、アロ細胞の活性化は低下した。以上より、MHC発現抑制細胞は抗原性の低下につながることが示唆された。 これら2種類のウイルスベクターをともに遺伝子導入することで、内因性TCRおよびMHC発現をともに抑制したT細胞を作製した。今後はこの遺伝子導入細胞を免疫不全マウスモデルに輸注し、抗腫瘍効果、宿主組織傷害、拒絶反応を評価する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内因性TCRを抑制し、かつMHC classⅠ分子発現を抑制したT細胞を作製することができ、in vitroでの評価にてアロ細胞への活性化の抑制、また抗原性の低下を証明する段階まで終了しているため、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は内因性TCRかつMHC classⅠ分子の発現を抑制したT細胞をより効率よく作製する条件を検討する。さらにこの遺伝子導入細胞を免疫不全マウスモデルに輸注し、抗腫瘍効果、宿主組織傷害、拒絶反応を評価する予定である。
|
Causes of Carryover |
内因性TCRを抑制し、かつMHC classⅠ分子発現を抑制したT細胞を作製することができ、in vitroでの評価にてアロ細胞への活性化の抑制、また抗原性の低下を証明する段階まで終了した。in vitro実験において、アロ反応評価実験の条件検討に変更が生じたため、次年度使用額が生じた。 追加でのアロ反応評価実験の遂行に係る抗体、試薬などの購入費用に加え、今後のin vitro実験におけるマウスモデル購入やウイルスベクター購入、および研究成果の学会発表のための旅費、英文誌投稿に関わる校閲費等に使用する。
|