2022 Fiscal Year Research-status Report
内因性TCRおよびMHC発現を抑制した非自己T細胞によるT細胞輸注療法の開発
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19K23919
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岡田 怜美 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40849501)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 輸注療法 / 宿主組織傷害 / 拒絶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非自己T細胞を用いたT細胞療法の確立であり“宿主組織傷害”と“輸注細胞の拒絶”を抑制した細胞の開発である。すなわち、輸注細胞である非自己T細胞の内因性TCRの発現を抑制することで宿主組織傷害を抑制し、さらに輸注細胞のMHC発現を抑制することで拒絶を抑制することを目的とする。 本研究ではがん精巣抗原であるNY-ESO-1抗原をターゲットとし、ヒトリンパ球にNY-ESO-1特異的TCRを遺伝子導入した。内因性TCRの発現を抑制するsiRNAを搭載させたレトロウイルスベクターを用いることで、同時に内因性TCRの発現を抑制させることが可能であった。また、MHC classⅠ分子の発現の抑制はβ2ミクログロブリンをターゲットとし、レンチウイルスベクターを用いたCRISPR/Cas9システムにより行った。これら2種類のウイルスベクターを導入することで、内因性TCRおよびMHC発現をともに抑制し、かつNY-ESO-1特異的TCRを発現したリンパ球を作製することができた。2種類のウイルスベクターを共に導入できた細胞の割合は低く、ビーズ分離法によるセレクションを行うことで、高純度の遺伝子導入細胞を作製した。この遺伝子導入細胞をin vitroで評価し、アロ抗原に対する反応性の低下、さらに抗原性の低下を認めた。またサイトカイン産生にて抗腫瘍効果を評価し、遺伝子導入細胞での効果的な抗腫瘍効果を示した。 この遺伝子導入細胞の抗腫瘍効果をマウスモデルを用いて検討した。免疫不全マウスにNY-ESO-1発現ヒト癌細胞株であるNW-MEL-38を皮下投与し、同時に遺伝子導入細胞を輸注した。輸注後、腫瘍体積を測定すると遺伝子導入細胞を輸注したマウスでは腫瘍増大を抑制することができた。 これらの研究成果の論文作成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
内因性TCRを抑制し、かつMHC classⅠ分子発現を抑制したT細胞を作製することができ、in vivoでの評価にて抗腫瘍効果の証明が可能であった。追加実験が必要であるが、コロナウイルス感染症に伴う現在の社会的背景もあり、物品の手配の滞りもあり、実験の進捗にやや遅れが生じている。今後、マウスモデルでの宿主組織傷害、拒絶の評価を追加実験として行う予定であり、研究成果報告予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は内因性TCRかつMHC classⅠ分子の発現を抑制したT細胞をより効率よく作製する条件を検討する。さらにこの遺伝子導入細胞を免疫不全マウスモデルに輸注し、抗腫瘍効果に加えて、宿主組織傷害、拒絶反応を評価する予定である。さらにこれらの研究成果の発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症に伴う現在の社会的背景により、物品の手配が滞りもあり、実験の進捗に遅れが生じている。また、学会の中止なども伴い、情報収集や学会発表が不十分な状況なため次年度使用額が生じた。 次年度に更なるマウス実験を行い、研究成果の発表を行う予定である。そのための試薬購入費用や旅費、論文発表費用として使用する予定である
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